「三大」というのに4つあるのはまだ世界で意思統一がされていないためで、3つに絞るのはお任せしますが、今回はブイヤベース(bouillabaisse)の話です。
発祥の地、マルセイユは港町。かつては、荒くれ者の集う場所、犯罪の多い街と言われていましたが、最近の著しい経済発展により、そのイメージは少しずつ刷新されつつあります。フランス第二の規模を誇る大都市で、人口はおよそ85万人。熱狂的なサポーターが多いサッカーチーム「オリンピック・マルセイユ」が有名で、現在は日本代表のサイドバック酒井宏樹選手も所属しています。
ブイヤベースには“ルール”がある
さて、ブイヤベースについて。そのルーツは、地元の漁師たちが売れ残った魚や売り物にならない魚、骨が多い魚をごった煮にしたのが始まりと言われています。「ブイヤベース」の語源は、「煮込む(bouillir)+弱める(abaisser)」で、つまり煮込み続けるという意味です。
作り方のポイントは、「Soupe de Poissons」と言われる小さな磯魚を丸ごとコトコト煮込んで、魚のうま味を引き出してあげること。昔は鍋で塩とオリーブオイルと煮るだけの料理だったのですが、17世紀に新大陸からトマトが入って来ると取り入れられ、同様に、香辛料のサフランやピマンデスペレット、さらに地元で取れるフェンネル、ローズマリー、ディル、パセリ、エストラゴンなどハーブ類で風味をつけるようになりました。
そうした変化を経て、今のブイヤベースがいつから存在しているのかはわかりませんが、マルセイユはブイヤベースのルールを守るため、1980年に「ブイヤベース憲章」を制定しています。それには、必ず用いるべき魚の種類や数、使っても許される材料について記されています。
サービスについても規定があり、ブイヤベースを提供する際には、スープの皿と魚の皿の2回に分けられ、魚の皿は客前で取り分けられなければならないとあります。また、アイオリやルイユ(ニンニク、唐辛子、卵黄、オリーブオイルを混ぜたピリ辛いソース)、場合によってはにんにくを擦ったクルトンが添えらます。
それにしても、様々な魚がとスパイスが入り、非常に複雑な味や香りのする料理を「ブイヤベース」というシンプルな料理名とし、世界三大スープに数えられるほど文化を開拓しているのは面白いなと思います。