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2018.06.01

「花火大会=無料」はもう古い 小橋賢児らが挑む伝統文化のアップデート

5月26日に開催された「STAR ISLAND」の様子


最初は新しいものが大好きな若い世代に焦点を当てて、プロモーションしていきました。寝ながら観る席やご飯を食べながら観る席など、様々な体験を提供す席種を用意したことも功を奏し、SNSを中心に口コミが広まり、チケットを購入してもらえました。

──1回目は当日券もあったみたいですが、2回目はチケットが事前に完売。すごいですね。

小橋:もちろん誰が観ても満足いくものをつくっている自負はありますが、チケットを購入いただけるのはほんとに嬉しく、有難い限りです。

──場所について伺いたいのですが、なぜお台場だったのでしょうか?

小橋:僕は昔、海外に憧れていて、正直日本はダサいと思っていました。しかし、仕事でアメリカに行ったときに日本の良さに気づいたんです。

数ある場所の中でも、特にお台場の浜辺や夜景は世界に誇れる絶景だと思っています。それにもかかわらず、東京に住んでいる人はお台場になかなか足を運ばない。イベントが開催されていたら、ちょっと立ち寄るくらい。

最近、お台場では外国人多く目にします。実は、彼らの方がお台場の良さを知っているのではないでしょうか。そういう身近な場所の素晴らしさに気づいて欲しい。これがお台場でSTAR ISLANDを開催することにした大きな理由です。

 

坂本:初めてカメラを手にしたときと似たような感覚ですよね。一眼レフで世界を見渡したら、身近な雑草が実はとてもきれいなことに気づく。こういう「気づきのきっかけ」はエンターテインメントの大きな力なんじゃないかな、と思います。

小橋:僕らは、STAR ISLANDのコンセプトを「ロケーション・エンターテインメント」とも呼んでいます。これにはいつもの場所でもちょっとした気づきを与えたいという願いが込められています。

「正直、面倒な客だと思っていました」

──小勝さんはいかがですか。150年以上の伝統をもつ花火師がなぜ、STAR ISLANDに参画しようと思ったのでしょうか?

小勝:かなり悪い言い方をすると、小橋さんやエイベックスさんも僕にとっては「クライアント=お客様」です。そのため仕事を頼まれた以上、やるからには全力で引き受けます。でも、正直に言うと、彼らはクライアントとして、かなり面倒でした(笑)

小橋:(笑)

小勝:なにしろ、彼らは全力でぶつかってくる。花火師は基本的に裏方の仕事。あくまで主役は花火ですし、危険物を扱っているので変に目立とうとも思いません。言ってしまえば、あまり儲けも考えていないですし、観客の声を直接聞くこともありません。

少なくとも僕の中では、花火師はお客様の喜ぶ顔を見るために仕事するというより、安全に花火を打ち上げる、その引き立て役というイメージでした。



しかし、彼らはそんな僕らのもとに演出家の潤間大仁さんと一緒に乗り込んできて。花火師の常識からすると、「無理だろ」と思う意見もどんどん言ってくる。時には徹夜で議論することもありました。そんなクライアントは今までいませんでしたよ(笑)。

最初の頃は面倒な人たちだと思っていましたが、彼らのアツい思いに触れるうちに、こっちも引くに引けなくなって……。「じゃあこっちもやってやるよ」という気持ちになっていきました。完全に触発されましたね。
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文=野口直希 写真=若原瑞昌

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