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2018.06.08

景気回復が進むリスボン、欧州の新たな国際都市へ

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リスボンは、観光地としてだけでなく、居住地としても外国人を惹きつけている。ポルトガル政府は、外国企業の投資を増やすべく、2012年に「ゴールデン・ビザ」制度を導入した。50万ユーロ(約6300万円)を不動産に投資すれば、移住することが可能だ。

また、ポルトガル移民局の情報によると、他にも、10以上の雇用機会の創出、芸術・文化遺産に関する25万ユーロの投資などと引き換えに、ビザを獲得するオプションも提示されている。国内滞在日数要件も、初年度が7日間、その後もたったの14日間と、低いハードルで設定されており、一定の滞在年数後の永住権・市民権への切り替えも可能だ。



国内外のスタートアップ支援にも力を入れているようだ。リスボンの空港のランドサイドには、ラウンジ兼用のビジネスセンターがあるが、このスペースを運営しているのは「Startup Lisboa(スタートアップ・リスボア)」だ。

Startup Lisboaは、2011年にリスボン市、モンテピオ銀行、中小企業・技術革新支援局(IAPMEI)が共同で創設した起業家支援のインキュベーターで、これまでに280のスタートアップを支援してきた。テクノロジー系だけでなく、観光産業のスタートアップに注力しているのも特徴だ。

同プログラムでは、審査を通過したスタートアップに対して、オフィススペースやメンタリングなどを提供するほか、リスボンの中心地に居住スペースも提供する。シングルルームの家賃は、月300ユーロ(約3万8000円)と魅力的な価格だ(同条件のエアビーアンドビーの価格は月20万円前後)。

スタートアップ関連でいうと、リスボンは2016年から、それまでアイルランドのダブリンで開催されていた欧州最大級のテクノロジーカンファレンス「Web Summit」の開催都市となっている。

昨年は、160カ国から約6万人が参加し、今年も11月上旬に開催予定。来年以降も、リスボンが同カンファレンスの開催都市になるかどうかは未定だが、3年連続のWeb Summit開催によって、リスボンの「スタートアップ都市」としてのブランドがさらに強化されたに違いない。

外国企業に対するビザ制度や税制優遇措置、そしてスタートアップにとっても魅力的な環境、そして観光客の増加と、リスボンは、今後、よりコスモポリタン化していくのだろう。

リスボンの都市の変化とともに、ポルトガルの産業がこれからどう変化していくのか。個人的には、アパレルや靴メーカーの動向や、コルクや食文化などの独自資源からの更なる付加価値の創出にも期待している。景気回復から新たな経済成長に向かうポルトガルに、今後も注目していきたい。

旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」
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文=MAKI NAKATA

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