危機に瀕するアトランティックサーモン、保護へ向け大きく前進

(Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images)


しかし、北大西洋に生息するアトランティックサーモンの数に最も直接的な影響を与える脅威はおそらく、サケが餌場とするグリーンランド沖で毎年冬に行われる漁業だ。グリーンランドでは過去40年間、何百万ものアトランティックサーモンの成魚が捕獲されてきた。グリーンランドのサケ成魚の漁獲量は、2015年だけでも2万匹に上る。

グリーンランドの漁業従事者とASF、NASFの間の新たな合意は5月22日に署名され、2029年まで12年間継続される。ASFの報道発表によると、グリーンランドは漁獲数を制限し、必要最低限の漁業しか行わない代わり、ASFとNASFからは代替的な経済開発や科学調査、海洋保全に関する教育活動に対する支援が行われる。またASFとNASFは、グリーンランド沖と同様サケの重要な餌場であるフェロー諸島でも、1991年以降実施されてきたサケの商業漁業中止の方針を継続すると発表した。

ASFのビル・テイラー会長は「サケが餌場とする区域で、野生のアトランティックサーモンの漁獲量を大きく減らすことには意義があり、決定的な動きだ。サケの保全だけでなく、世界の生物多様性や河川・海洋の健康にとって良いこと」と述べた。この取り組みの財源は、ASFとNASFに寄せられる個人の寄付金のみだ。

この合意が特効薬となり、アトランティックサーモンの生息数は以前の水準までいきなり回復するだろうか? 多分そうはならないだろう。効果が感じられるようになるまでには時間がかかるかもしれない。しかし、現在生息しているサケを守る上で大きな一歩であることには間違いない。

NASF米国のチャド・パイク会長が述べたように「北大西洋のサーモンを守る最善の方法は、殺される数を減らすこと」なのだから。

編集=遠藤宗生

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