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2018.06.11 10:00

体質は変えられるか、エピゲノム解析から見える人類の未来




井上:レリクサを立ち上げて3年目ですよね。企業理念が『生命情報を読み解き、生き物の新たな可能性を想像する』ですが、レリクサが目指す未来はどんなものですか?

仲木:これまで色々取り組んできて気が付いたんですが、エピゲノムは解明されてないことがまだまだ多いということ。遺伝子検査サービスが身近になってきたように、ゲノムは徐々に一般化されていますが、エピゲノムはまだまだ一般消費者に対して製品化をしていける段階ではないんですよ。エピゲノムの変化は要因が複合的なので、結論付けが非常に難しいんですよね。だから研究すればするほど、他領域にまで広がっていく。

井上:分かっているようで、分かっていないことだらけ。

仲木:結局、エピゲノムだけじゃ解けないんです。もちろんゲノムの情報も必要ですし、生活環境も知らなければならない。だから、包括的に一人の人間を追求するヒューマノーム研究所にはすごく親和性を感じているんです。

井上:他分野と融合することによって、いろんなことが分かるようになる?

仲木:ゲノムは生まれ持ったもので基本的には変化しない。ある意味中心みたいなものですよね。その上に、さまざまなが要因が積み重なってエピゲノムが変化していく。要因を正しく把握するのは難しい部分もありますが、いろいろなデータを組み合わせながら、一つ一つ紐解いていくことが大切だと思っています。具体的には、バイタルデータはもちろんのこと、睡眠や食というところにもフォーカスして、エピゲノムの変化とそれによる身体への影響を解明していきたいです。

井上:ゲノムを設計するのではなく、ゲノムから現象が起こるまでの間を設計するイメージですか?

仲木:そうですね。日々の睡眠や食生活からできあがった体質って、たとえ1日生活を改めても変わらないことばかり。本当に身体を変えたいなら、根本的に体のプログラムを変えないといけない。エピゲノムの解明が進んだら、それをコントロールできる状態を目指そうと思います。

井上:それこそ本当の意味での、肉体改造ですね!

仲木:僕にとって、エピゲノムは「自然の織りなすものづくり」だと感じているんです。エピゲノムは後天的な要因で変化するので、操作もできるはず。つまり、自身のゲノムを使って新たな可能性を創発することができるんですよ。

「ポストヘルス時代」考察
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仲木 竜◎株式会社レリクサ 代表取締役社長。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。 計算生物学者。次世代シーケンサーより得られた大規模ゲノム・エピゲノムデータの専用解析アルゴリズムの開発・応用を専門とする。2015年2月に株式会社レリクサを設立。第一種放射線取扱主任者。

井上 浄◎株式会社リバネス取締役副社長CTO 博士(薬学)/薬剤師。2002年、大学院在学中にリバネスを設立。博士課程を修了後、北里大学理学部助教および講師、京都大学大学院医学研究科助教を経て、2015年より慶應義塾大学特任准教授に就任・兼務。研究開発を行いながら、大学・研究機関との共同研究事業の立ち上げや研究所の設立、ベンチャー企業の立ち上げ等に携わる。2016年、ポストヘルス時代における人のあり方を思索する『ヒューマノーム研究所』を設立。

構成=ニシブマリエ 写真=藤井さおり

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