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2018.06.11

体質は変えられるか、エピゲノム解析から見える人類の未来

左:リバネス取締役副社長CTO 井上浄 右:レリクサ代表取締役社長 仲木竜


井上:大学で研究を続ける、続けないでは悩まなかった?

仲木:自分で言いますけど、僕はそれなりに優秀な研究者だったんですよ(笑)。研究者として重視されるものって、どれだけその人が先陣を切って新たな研究に挑んだかじゃないですか。でも、その研究の場って、大学でなくても企業でもいいですよね。一度大学から離れたらもう戻れないというのは、誤解だと思うんです。特別な経験を積みさえすれば、またいくらでも活躍できる。

井上:大学でしかできない研究もあるし、企業でしかできない研究もある。当然、共同じゃなきゃできない研究も。

仲木:そうです。お医者さんが患者さんの診察をする一方で、研究もするって普通にあることですよね。医療と研究の組み合わせは自然に受け入れられるのに、なぜか事業化と研究の組み合わせという発想が日本にはあまりない気がしていて。大学の環境から出たことをリスクだと言う人もいますが、今動く方がよっぽど安全だと思うんですよ。パッとしたことを何もせずに、なんとなく5年や10年を過ごしてしまう方がむしろリスク。

井上:僕も学生で起業したとき、大学では論文を書くことや研究費の取得が目的化してしまう危機感みたいのを感じていました。とても重要なことであることは分かっていましたが、「論文のための、研究費取得のための研究」っていうスタンスは僕は違うかなと。


リバネス取締役副社長CTO 井上浄

仲木:もっとみんな好きなことをした方がいいと思うんですよね。今、僕は「人生かけている」とはっきり言えますね。

井上:仲木さんはレリクサで、エピゲノム研究が発展するためのプラットフォームを作ろうとしているんですよね?

仲木:そうです。エピゲノムに関する知識や、解析方法のノウハウといった情報の塊を積み重ねていって、エピゲノム解析をするときに一番最初に声が掛かる会社を目指しています。

エピゲノムは、経験がものをいう領域なので、研究者が増えないとエピゲノムも発展しない。研究者が増えれば新たな知見が増えますが、その膨大な情報を自分たちだけすべて扱うのは不可能とも思っている。だから、レリクサの持つノウハウや解析技術を全てAIに学ばせようと思っているんです。いわゆる、人工知能型のエピゲノム解析支援システム。直近では、これを作ろうと思っています。

井上:エピゲノムの解析に関する全てをレリクサのプラットフォームに集め、エピゲノムの研究を加速させることが、レリクサのやりたいことなんですね。

エピゲノムは遺伝子の働きをコントロールするという話を最初にいただきましたが、それはつまり、エピゲノムの状態を見たらその人の健康状態も予測できるということ?

仲木:かなり分かると思います。身体に出る症状よりも先に、エピゲノムに変化が現れるはずなので。

井上:健康寿命を延伸したいと思ったときに、そこにエピゲノムがどう関係してくるのかが、一般の人たちはすごく興味があると思うんです。例えば、老化とか生活習慣なんかは皆気になっているはず。

仲木:エイジングって、紫外線や、喫煙、飲酒だったり、明らかに後天的な要因と結び付いていますよね。エピゲノムを個人に合わせて最適化することができたら、もしかしたらエイジングの一部を強制リセットできるかもしれません。そうしたら、たとえば10代の頃のピチピチな肌に戻す、なんてもことも不可能じゃないかもしれない。
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構成=ニシブマリエ 写真=藤井さおり

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