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フォーブスジャパン編集次長/シニア・ライター


「御社のビジネスエリアではこういうことができます」と、各産業の大手から訪ね歩いてみると意外だった。彦坂が言う。

「正直、クレイジーな話なので理解されないのは仕方がないと思っていました。しかし、自分たちの仕事を変えたいと熱く語る方々は大企業にもいたのです」

災害救助や建設業など危険作業の代替は容易に想像がつくが、例えば、アパレルは華やかな店頭での仕事よりも、梱包を解いたり検品をしたりする倉庫作業の時間が圧倒的に長い。人手不足の悩みは業界ごとに背景が違うことを知った。

ある日、彦坂はKDDIの紹介で、石川県七尾市のエフラボという「日本最大の椅子再生工場」に飛んだ。全国のホテル、結婚式場、劇場、病院、あるいはハワイのホテルからも椅子修理の注文が来る。

「遠方から能登半島への仕事が来るということは、それだけこの職業に就く人が少ないことがわかりました」と彦坂は言う。椅子は滅菌をした後、布地を剥がして分解し、歪みを直し、新たな布地の裁断、縫製、加工と細やかな作業が求められる。エフラボの松井正尚社長が言う。

「もともとこの地域はアパレルの縫製工場が多く集まっていたのですが、生産拠点が中国に移ったことで激減しました。80社ほどあった建具業も6社まで減っています。職人が集まりにくく、50代以上が中心です。若い人の技術習得には時間がかかります。そこでロボットと人間の仕事をうまく使い分けられないかと思ったのです」

テレイグジスタンスは最終的に「ハイブリッドモーションプランニング」というものを目指している。ベテラン技術者の動きをロボットが機械学習で習得していく。そして若い未習熟者の作業をロボットが補正する。つまり、ロボットを使った技術の伝承だ。また、一人の技術者の動きを10台の機械で動かせば、作業量は10倍になる。ロボットの完全自動化はまだ先の課題だが、彼らに見えてきたテレイグジスタンスの核心は、「都市の人口集中の緩和」である。



昨年8月、大分県庁東京事務所の武藤祐治はテレイグジスタンス社を訪れた。「概念を知らなかったので、衝撃でした」と武藤は言うが、彼は富岡と彦坂に面会を重ねるうちに、可能性を広げていく。

最初に武藤が思いついたのは、地方在住の者なら容易に予想できる課題だった。

「大分県は果樹栽培が多く、ブドウ棚はずっと上を見ながら摘む作業があります。ハウスみかんなどビニール栽培は、夏になると、過酷になります。高齢化する生産者の負担軽減になると思いました」

東京にいながらテレイグジスタンスを活用した観光体験もできる。「温度が伝わるのなら、温泉に入れましょう」という提案には、彦坂が「水は勘弁してください」と苦笑したが、東京でビラを配ったり、動画を見せたりするよりも、大分を遠隔体験する方が誘客につながるだろう。

文=藤吉雅春 写真=岩沢蘭

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