中国6万校が「添削AI」を導入 1億2000万人の作文を判定

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人工知能ブームが起きている中国では、学校教育の場にも着々とAIが浸透している。サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)などが報じたところによると、中国国内にある約6万の学校では、学生の作文テストの評価に人工知能(AI)が採用され始めている。

中国政府および、軍研究所のインターネット監視プログラムに従事していた言語研究チームが開発したその「AI作文評価プログラムは」(以下、AIプログラム)は、作文の全体的な論理や意味を分析し、人間の教師のように評価しスコアを付ける。その後、作文のスタイル、構造、テーマなどに対して改善点を提案してくれるという。同AIプログラムによるテストには、1億2000万人以上が参加しているという。

同AIプログラムには、作文の評価にかかる教師の時間を節約し、人間の教師が必然的に犯してしまう「誤った評価」や「偏見」を排除するという目的がある。また、田舎や僻地に住む学生の文章力を、オンライン評価で高めるという趣旨があるという。

とはいえ、人工知能を使った評価はまだ不完全だ。人間ではなく、機械が作文を評価することに反感が出てくることも想定されている。そのため、このAIプログラムは学生の成績に残る公式な試験ではなく、非公式の学内試験にのみ採用されているという。

なおテスト段階で得られた結果としては、AIが採点したスコアと、人間の教師がつけたスコアが一致する割合が92%という高水準に至った一方、AIが優れた作文に対して低い点数をつけるケースも見受けられるという。一例では、米有力紙・ワシントンポストに掲載された論評に対して、AIプログラムは100点満点で71.5点の低い点数をつけたとされている。

北京師範大学の教育関係者はメディア取材に答え、「コンピュータは数学、物理学など客観的な答えが要求される領域では評価に役立つ。一方、文化的、感情的、個人的な要素が強い作文の評価に活用するとなれば議論を呼ぶことになるかもしれない」とコメントしている。

過去には「人工知能が書いた文章」がソーシャルメディアで人気を集め、1000万件以上のビューを記録した事例もある。一方で、人間が生み出した「文章を評価するというタスク」は、AIにとってまだ難しいのかもしれない。美しい、もしくは人を惹きつける文章は、正しいルールだけではなく、新しい概念や言葉、そして時に“逸脱”を含むものである。

ルールを判断することに長けた人工知能は今後、ルールにそぐわない美しい文章を見定めることができるのか。中国の学校で活用されてる「添削AI」の続報を待ちたい。

文=河鐘基

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