発達障害や不登校、引きこもりの子どもたちを専門に預かり個別で指導する「あすはな先生」の教室だ。子どもたちを指導するのは、臨床心理士の資格を持つ専門家を中心に、大学や大学院などで心理学、福祉学、教育学などを学ぶ学生たち。
子どもたち一人一人に対して事前に臨床心理士がヒアリングを行い、発達上の特性や、障害、認知の特性を把握した上で個別の学習プログラムを組んでいくのが強みだ。
注意欠陥多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)など発達障害と診断され公的支援の対象になる子どもたちだけではなく、グレーゾーンと呼ばれる「やや不器用な子」や「集団生活が困難な子」など、公的支援の枠組みからこぼれ落ちてしまう子どもたちも入塾が可能で、我が子の生育に不安を抱える親たちの「駆け込み寺」的な存在として注目を集めるようになった。これまでに小・中学生を中心に約560人の子どもたちがここで学んだ。
塾を運営するのはクリップオン・リレーションズ。「あすに花咲くたねを育てる」をモットーに、大学で臨床心理学を学んだ上木誠吾さん(40)が12年前に起業した株式会社だ。仲間の臨床心理士たちとビルの一室で始めた学習塾も、今では大阪、兵庫の3教室に加え、東京での家庭教師サービスの提供や臨床心理士による相談室も開所し規模は拡大している。
膨らむニーズに対応するためには人材育成も欠かせないと、一昨年には「発達障害サポーター’sスクール」を開講。臨床心理士が一般の受講生に対して、発達障害などに関する基礎知識から専門的なノウハウまでを教育する仕組みを大阪や東京でスタートさせた。そこでは、「発達障害学習支援サポーター」という民間の資格を取得できる制度も整えている。
保育園で働く保育士から発達障害の子を持つ親まで様々なバックグラウンドを持つ人々が、知識と資格を求めこの講座に参加している。中には、沖縄の離島からわざわざ受講にきたという小学校の教諭もいた。有料の講座は毎回ほぼ満席で、これまでにのべ3000人以上が受講している。
「発達障害サポーター’sスクール」の講座は毎回満席だ
的確に捉えた潜在的ニーズ
上木さんが「あすはな先生」を立ち上げたのには2つ理由がある。1つ目は「グレーゾーン」の子どもたちへのサポートが不足していることに気がついたからだ。
そもそも、発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と法律で規定されている。
政府の資料によると、特別支援学級在籍者数は、平成16年の9万851人から、平成26年には18万7100人へと増加。通級による指導を受けている児童生徒数も、平成16年の3万5757人から、平成26年の8万3750人へと増加傾向にあるというデータがある。いずれも、発達障害を持つ子どものニーズが増えているからだとされている。