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2018.06.01

ガザ地区に電力を、「天井のない監獄」で太陽光発電に挑む若者たち

壁に囲まれたガザ地区でも、太陽の光だけは豊富にある


日本政府もプロジェクトを開始
 
日本政府も昨年から、ガザ地区における太陽光発電プロジェクトを開始した。そのうちの一つが、アブ・ユーセフ・ナッジャール病院への太陽光発電システムの設置である。同病院は戦時に多くの患者を受け入れるなど地域でも重要な医療機関だが、他の医療機関同様、電力不足により適切な医療サービスを行えず、突然の停電による医療機器へのダメージにも悩まされてきた。

同病院では2014年のイスラエルによるガザ侵攻を期に、発電機を整備。しかし年間燃料費が約200万円と高額で、財政状況を圧迫。発電機を24時間稼働させることができないため、例えば同地域内で唯一整備されている人工透析器は一日15時間のみ稼働、患者は本来必要な透析回数を減らすなど、十分な治療が行えていなかった。

太陽光発電システムを導入することで、不安定な電力供給、ひいては医療環境を改善することができ、同病院が抱える年間3万人の患者が利益を享受できる予定だ。

24時間電気が供給される日本ではなかなか想像しにくいことであるが、電気がなければ、汚水処理施設が停止し、手術中に電気は消え、夜は暗い中で過ごし、冷蔵庫、暖房や冷房も使えず、携帯やパソコンも充電できない。太陽光発電は燃料代の節約や環境にいいだけでなく、虐げられてきたガザ地区の住民に大きな恩恵をもたらす可能性がある。

太陽光発電は燃料代の節約になり、環境に優しいだけでなく、困難な生活を強いられているガザ地区の住民の生活を一気に改善させる可能性がある。マジドさんやアブドッラーさんのように、太陽光発電を事業化する若者の起業家も生まれている。

「天井のない監獄」に降り注ぐ太陽の光。これを味方につけられるか否かで、ガザ地区の未来が決まると言っても過言ではないのかもしれない。

文=本田圭

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