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2018.06.03

英語ゼロから世界一に、日本人バーテンダーの新たな挑戦

ベネンシア(シェリー酒に使う柄杓)を使ってオリジナルカクテルを注ぐ後閑信吾


1860年、アメリカを訪れた遣米使節団の侍たちが、バーを訪れたという記録が残っている。「その侍たちが、もし日本でバーを開いたら」というドラマティックなコンセプトの店だ。オープンは、6月16日。侍たちがアメリカ上陸したその日に開店すると決めた。ちなみにこの日は、奇しくも4年前に「スピーク・ロウ」がオープンした日でもある。

東京渋谷区で新しくオープンするバーの名前は、「ザ・エスジー・クラブ(The SG Club)」。「SG」はもちろん後閑のイニシャルでもあるが、もうひとつは、Sip and Guzzleを意味する。つまり、旧来のバーのようなSip(ゆっくり飲む)と、賑やかに楽しむGuzzle(ガブガブ飲む)が、ふたつとも楽しめる店であるというコンセプトに由来している。

後閑は、バーテンダーとして世界を見て来たなかで、「自由な発想で、客のニーズにあった居心地良さを提供する」ことの大切さにも気付いた。日本では、居酒屋には行ったことがあるが、本格的なバーには行ったことがないという若者も多いだろう。そんな若い人たちに、もう一度バーの魅力を伝えたいという気持ちもある。

「ザ・エスジー・クラブ」の地下1階は落ち着いて飲むスタイルのバーだが、1階にはガブ飲みがコンセプトのバーをつくり、上質な台湾の茶葉を使って丁寧に水出ししたウーロンハイや、レモンバームやレモンバーベナなどのハーブを使ったレモンサワーなど、「本気でつくった」チューハイを手ごろな価格帯で出そうと考えている。

その他にも、ベースのハードリカーに焼酎を取り入れたカクテルも提供する。そこには、「焼酎は日本の国酒でもあり、もっとカクテルに使われても良いはず」という、日本人バーテンダーとしての思いがある。

日本でも、欧米のように気軽に楽しめるバー文化が根づけば、旧来の日本のバーの良さも感じることができるだろう。「ザ・エスジー・クラブ」を通して、その両者をつなぐ架け橋となるのが、後閑がいま目指しているところだ。かつての侍たちが、日本とアメリカをつなぐ架け橋となったように。

文・写真=仲山今日子

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