ビジネス

2018.05.29

脱「百貨店の1階」は化粧品の売り方を変えるか 米大手が試み

Radu Bercan / Shutterstock.com


競合他社にも影響か

サックスの新しい美容フロアは、約2970平方メートルのスペースにスパのトリートメントルーム15室と、79平方メートル余りのイベントスペースを備えている。このスペースではインフルエンサーによるワークショップなどが開催されるほか、プライベートの小規模な集会や、展示会を開くこともできる。

また、より多くのことを体験したいという顧客のために、顔のマッサージ、スリミング、アイラッシュとアイブロウのカラーリング、毒性のある成分を含まないマニキュアを使用するネイルサロンでの施術を受けられるサービスを用意した。

同スペースには、化粧品とフレグランス、ウェルネス関連を合わせて122のブランドが入居。このうち61のブランドは、「Beauty on 2」の開設に合わせて初めてサックスに出店したものだ。

今後もまた、新作のリップをつけてしかめっ面をしたモデルの顔を、ポスターなどで目にすることはあるかもしれない。だが、このスペースからはガラスキャビネットが姿を消し、替わりにセルフサービスで試すことができる多数の商品が並んだ棚が設置されている。

強引に香水を吹きかけようとする従業員もおらず、(少なくともゲランのフレグランスメゾンでは)デジタルコンサルティング・サービスが受けられるようになっている。110種類のクリエーションの中から自分で選んだものを、パーソナライズすることができる。

こうした方向転換が、サックスの美容関連部門の売上高を引き上げることになるのかどうかはまだ分からない。だが、サックスは顧客がただ口紅を買ってすぐその場を離れるような売り場ではなく、一日中でも過ごせるような環境を生み出した。店内で過ごす時間が長くなれば、売り上げも増えると考えるべきだろう。競合他社はすぐにも、美容関連の製品の売り方に関する自社の戦略について、考え直す必要に迫られるはずだ。

編集=木内涼子

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