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2018.05.29

脱「百貨店の1階」は化粧品の売り方を変えるか 米大手が試み

Radu Bercan / Shutterstock.com

化粧品が大好きだという人に聞いてみれば、きっと初めて地元の百貨店の化粧品売り場に行った幼いころのことを覚えているだろう。

殺風景な駐車場から、厚化粧の女性たちが香水を吹きかけようと客に歩み寄り、艶感のある華やかなメイクをして唇をとがらせたモデルが写る色鮮やかな広告が掲げられ、ガラスキャビネットいっぱいに並んだチューブやボトルが、「美しさ」や「なめらかな肌」といった誘惑の言葉を投げ掛けてくる“魔法の世界”に足を踏み入れたときのことを──。

百貨店では伝統的に、美容カウンターは1階に設けられてきた。それは、消費者がトレンドのピンク色のリップが「本当に必要なのか」考える前に、アンチエイジングクリームの新商品を試してみたいのかよく分からないうちに、衝動買いしてしまうことを狙った戦略のためだ。消費者が進化する一方、百貨店は大半において、そうした従来通りの姿勢を変えずにきた。

だが、カナダの小売大手ハドソンズ・ベイが傘下に置く米百貨店サックス・フィフス・アヴェニューはこのほど、その状況に大きな変化を起こした。ニューヨーク5番街にある旗艦店の2階に、美容に特化した新たなスペース「Beauty on 2」をオープンさせたのだ。

1階から「追い出された」?

サックスが化粧品売り場を移動させたのは、なぜだろうか?移設は決して、1階からの“追放”ではない。サックスにおいて意思決定権を持つ人たちが、顧客の変化を認識していることを示すものだ。

消費者が衝動買いをするのは今、インターネット上に変わっている。そして、実店舗に望むのは、ゆっくりできること、学べること、試せること、そして施術を受けられる場であることだ。

コンサルティング大手アクセンチュアの調査によると、ミレニアル世代は実際には、オンラインショッピングより実店舗での買い物を好む。ただ、従来のように香水を試すことや、美容カウンターの後ろに控える従業員たちと話すことでは満足しない。店舗での体験を求めている。
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編集=木内涼子

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