──対極的なんですね。もう超理系と超文系のような感じ。
金山:それくらい違います。もう一点、技術の進歩がファッション業界に取り入れられてこなかったことも要因かなと思います。インターネットはほとんどがテキストの文化だったわけですが、ファッションにテキストはほぼ不要。むしろ絵や写真といった画像の文化です。
これまでのテクノロジーは計算資源の問題から画像を大量に取り扱うことができなかった。テキストは解析しやすく低コストですが、画像は情報量が多いため、限られた人しかそれを取り扱うような計算資源が得られなかったという過去があります。
ただ、引き続きいわゆるムーアの法則に従って、計算資源がさらに安くなり、誰でも画像を低コストで取り扱えるようになる。そうすれば裾野が広がるのではないでしょうか。
機械が目を持って画像を認識し、解析できるような時代に突入しているファッションテックもこれから飛躍的に盛り上がるんじゃないかなと思っています。少し変な例えですけど、新興国が一気に伸びるような感覚です。
「やらないといけないけど、やりたくないこと」からAI革命が起きる
ローランド・ベルガー プリンシパル 福田 稔
──機械学習やAIの話も絡んできますよね。最近ファッション業界でもAIの活用が進んでいます。画像認識やウェブ接客、在庫や需要予測など様々な用途でAIが用いられています。金山さんはどの領域でAIの活用が活発になっていくとお考えですか?
金山:AIが活用される領域は、自分としてはひとつだけと考えています。「人間の意識決定の代替」です。そこが今後すごく伸びると思いますし、それが初期段階でAIが活用される領域だと思っています。
よく言われているように、本当に産業革命に匹敵するインパクトがあると思っています。
いわゆる18世紀後半の産業革命は、物理的なパワーの革命です。蒸気機関が発明されて、人間のパンチ力よりもすごい力のパンチを機械が繰り出せるようになった。人間では引っ張れないものを引っ張ったり、押せるようになったりしたことで、動力の革命が起きました。
その次に起きるのは知力の革命です。何かを考え、判断する際に人間がやらなくてもいい部分が増えてきます。この革命は、「人間がやらないといけないけれども、やりたくないこと」において大きなインパクトがあると考えています。
例えば、音楽が好きじゃない人に、明日のパーティーで流す音楽を決めてもらう。料理が好きじゃない人に、今日の献立を決めてもらう。こうした本人にとっては苦痛だけど、やらなければならない作業を機械がやってくれるようになるんです。
単純に労働力と言うと多くの人は動力をイメージしがちですが、もう一方の知的労働で人間がやりたくないことを人工知能が代替してくれるその点でファッションは打ってつけです。
時々自分たちが開催している100人規模のセミナーで「今日のファッションに自信がある人」と問いかけても、手を挙げるのはほとんどゼロ。みんな服は着ているし、服を買った事がない人はいないのに、ファッションに自信がない。やりたくないけどやらなきゃいけないからやっている人が少なくないんです。
だとすれば、必ずしも人間がやる必要はないですよね。それは機械がやれば良い。ファッションにおける人工知能は、まずは人間の不愉快なところ、やらなきゃいけないけどやりたくないというところから浸透していくんじゃないかなと思います。