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カリスマファンドマネージャー「投資の作法」


「マッチョ系」と「平成生まれ」

平成生まれの経営者にはそういう人が少なく、高級車や高級酒、芸能人とのパーティーやタワーマンションに興味がないことが多い。欲がないわけではない。おそらく記号化された成功に興味がないだけだ。だから、昔ながらのマッチョ系経営者がベンツに乗るのを見て「なんで化石燃料のクルマに乗るんですか?」みたいな反応になる。

するとマッチョ系の経営者は若手の経営者に、「おまえらは草食系でまるでダメだ。迫力もないし、のびしろもない」と一刀両断して説教する。でも、平成経営者はそういう人たちに冷ややかだ。

私の投資先に「MATCHA」という会社がある。インバウンドの訪日観光客のために多言語で情報提供するサイトを運営している。日本は、英語や中国語以外の言語で観光するにはハードルが高い。それを解消するのがMATCHAという会社だ。

同社の青木優社長は28歳。まさに平成生まれの経営者である。以前に北海道の帯広で行われた経営者の勉強会に彼も参加していた。その後、タクシーに分乗して会食が行われる会場へ向かうことになった。スノーピークの山井太社長と私とでタクシーに乗ろうとすると、青木社長が助手席に乗ってきた。草食系のやわらかい物腰の人である。「ご一緒してもよろしいですか?」と聞いてきた。

断る理由はない。すると助手席からこちらへ振り向き、「到着するまでMATCHAの話をしていいですか」と言ってくるではないか。まさか、雪の降る帯広で降ろすわけにはいかない。エレベーターピッチならぬ、タクシーピッチだった。

結果的に、そのときの話がきっかけで山井さんも私もその会社に投資をすることになった。見かけは草食系だが、経営者としての俊敏さは、肉食系おじさん経営者に勝るとも劣らない。

これは一例だが、平成経営者は経営そのものへの集中力が高く、成功への道筋も青木さんのように最短距離をガッといくことが多い。そういう意味では、羽生結弦選手や大谷翔平選手、藤井聡太六段にも共通しているところがある。

強調するが、肉食系の欲が強い経営者と平成型経営者の善し悪しではない。あくまで、世代によって違いがある、ということ。私は価値観がやや平成寄りということもあり、アジャストしやすいのでよかった。適応することが大事である。

平成時代への評価は、平成が終わってしばらくして、じつは平成は多くの天才を生み出した時代、という総括がされるかもしれないと思いつつある。ゆとり教育は日本の競争力を削いだ、と総括されて最近は否定的な声も聞かれる。しかし、彼らが社会人になろうとしている。ゆとり教育はひょっとしたら、限界知らずの一騎当千の若者を育てたのかもしれない。

少なくとも私は20代経営者への投資が増えそうだという印象を持っている。

連載 : カリスマファンドマネージャー「投資の作法」
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文=藤野英人

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「タンス預金」が日本の未来を切り開く

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