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2018.06.06

「失敗する3つのL」から考える経営者の価値観

イラストレーション=高田尚弥

世代によって経営者のマネジメントスタイルと、その生き方が異なるのは当然のことだ。マッチョ系と平成生まれ、その違いはあれども、「適応することが大事」だと筆者は語る。

米カリスマ投資家ウォーレン・バフェットが、経営者が失敗しやすい「3つのL」という話をしている。

それは、Liquor, ladies and leverage(酒と女とレバレッジ)。

実際に45歳以上の創業経営者は割と俗っぽく、モチベーションの源とはそんなものだ(もちろん、そうでない人もたくさんいるが)。高級車に高級酒、芸能人との秘密パーティー、タワーマンションのペントハウスなど……。

レバレッジは、乱暴に言うと“借金”である。実際に私が見てきた創業経営者の破綻は、この3つのいずれか、もしくは複数のコンボによる。

2008年のリーマンショックに際して多くの経営者がこれでやられた。経営者がどれほど資産家だとしても、持ち株の評価がその資産の9割以上を占めていることが多い。そして、オーナー経営者であれば、おいそれと持ち株を売るわけにはいかない。

ということは、資産家といっても所詮は絵に描いた餅。そうしたこともあり、多くの人が現金を手にするために株式を担保に借り入れをする。いわゆる「カブタン」だ。

例えば、80億円の資産価値がある場合、20億円程度を借り入れてそれで豪邸を買ったり、遊興費に使ったりする。経営のプロとはいえ、お金のプロではない。ふつうの人が宝くじで1億円当たると、金遣いが荒くなって結果的に不幸になることもある。ましてや数億円から10億円単位の資金が入れば、正気を失う人も少なくない。

思う存分散財したところでリーマンショックが起きた。株価が急落して借り入れをしたときの約4分の1になるようなケースが多く見られた。そのときには持ち株の価値が下がってしまったので、借入金の額が担保額を下回るために、追加の担保資金を提供するか、借金を返すしかない。

そこで泣く泣く持ち株を売却した上にそれで得たお金で支払いを済ませ、会社の経営権まで失うような羽目に。一気に無一文になってしまったのだ。

とはいえ、そのような単純な欲望や体育会系的ノリ、いわゆる肉食的な嗜好がダメとかいうわけではない。Eコマースの大手の経営者がパンツ一丁になると、5秒以内に役員全員がパンツ一丁になる──。その俊敏性と忠誠心が会社の強みでもある。

5秒でパンツ1枚になれることが役員への道。創業経営者のひと言により全社が火の玉になるのはすごい強みだ。部下が「そもそも何の意味があるのですか?」と次々に質問をしたら、スピードに支障が出るかもしれない。
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文=藤野英人

この記事は 「Forbes JAPAN 「地域経済圏」の救世主」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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