ビジネス

2018.05.29

ストーリーを語るデザイナーたち——heyのCIデザインはいかにして生まれたか?

Coineyのデザイナー 松本隆応(左)、CIデザイナー タカヤ・オオタ(右)


タカヤ・オオタさんは「CIデザイナー」という肩書きで働かれていますが、自分の場合は厳密に言うと「社内のいちデザイナーとしてCIデザインを手がけた」という表現が正しいかもしれません。

heyのCIデザインに関しては、「CoineyとSTORES.jpが統合し、heyという新会社を立ち上げ、商取引事業をやるのでCIをつくってほしい」と、コイニー代表の佐俣奈緒子からオーダーがあって。そこで2社が合同でつくる会社がどのように見えるべきなのか、それを考えることからCIデザインはスタートしていきました。

オオタ:多くのスタートアップはなかなかCIデザインに時間を割くことが難しいのが現状です。やっぱり事業全体で考えると、アイデンティティの設計に工数をかけるよりもプロダクトを磨き込む方が、優先度は高い傾向にあります。

そのため、他の仕事と並行して進めることは難しかったり、専門的な領域のため取り組みづらかったりする、という声をよく耳にします。heyのように、初期からきちんとCIデザインに取り組むのは珍しい事例ですよね。

松本:一般的にデザイナーがウェブサービス、アプリのUI/UXを手がける場合、プロダクトが掲げているコンセプトに近づけるため、インターフェイスを変えていくことが多いです。しかし、新会社のCIを考えるとなると、より上流の「ビジョンを可視化すること」から始めなければいけません。

ただし、策定したビジョンは事業が拡大していかないと正しいかどうかわからない。それに、プロダクトがユーザーに受け入れられなかった場合、事業をピボット(方向転換)する可能性もあります。どこまでデザイナーが事業の最終的なビジョンを決めるのか、は難しい点でした。



オオタ:CIをつくる際、一般的にはデザイン会社へ依頼することが多いと思います。でも、その会社が掲げるビジョンや事業のことを深く理解しているデザイナーに任せる事例がもっと増えても良いな、と。

松本:そうですね。heyは佐藤裕介、佐俣奈緒子を筆頭に経営陣が「CIの重要性」を理解し、そこに投資すべきだと思ってくれていたのは大きいです。日中は普段の業務を行っていたので、それなりに時間はかかりました。ただ、経営陣の理解があったからこそ、腰を据えてCIデザインに取り組むことができ、個人的には満足いくロゴができたと思います。

オオタ:heyのロゴすごくいいですよね。具体的なプロセスについても教えてください。CIデザインの工程においえ、デザイナーが正しいキーワードを引っ張ってきて、ロゴに変換していくことが求められると思います。heyを表現するキーワードは「生産消費者」となっていましたが、どうやってその言葉にたどり着いたのでしょうか?

松本:heyのキーワードを探していく過程で、社会がどう変化しているかを概念的に考え、キーワードを書きだしていったんです。
次ページ > 「生産消費者」を軸にバリエーションを考える

文=奥岡ケント 写真=小田駿一

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事