ローンチ後も複数回ロゴを改定するなど、スタートアップでデザイナーがあげてきた成果は、言及するまでもないほどに壮大である。
しかし、デザイナーが着工する対象物は企業の「ロゴ」に留まらず、企業の「アイデンティティ」へと、より上流工程へと移動しつつあるのが昨今のトレンド。
企業のアイデンティティを設計する「CIデザイナー」が台頭し始めた。彼らは企業の歴史や背景から、ビジョンをデザインへと落とし込んでいく。企業の文化や背景といった目に見えにくいものを、目に見える「ロゴ」へと変換していくのだ。
2018年2月、hey社のCIを担当したCoineyのデザイナー、松本隆応は自身のブログで、同社のCIが出来上がるまでのプロセスを記事にして公開。9000字に及ぶテキストと20枚以上のイメージで、デザインの意思決定を時系列順に語っていった。同記事はSNSで多くの反響を呼び、「インサイドストーリー」として記録になっている。
女性向けファッション情報アプリ「MERY」やフレンドファンディングサービス「polca」などのCIを担当してきたタカヤ・オオタ氏を交えてCIデザインを語る。
スタートアップでのデザイナーの役割が言語化・体系化されつつある今だからこそ、若手のデザイナーが紡いだ言葉とストーリーに耳を傾けたい。
広がりつつあるデザイナーの役割、heyのCIはどう生まれたか?
オオタ:松本さんが書かれたnoteの記事を読んだとき、ただ単純に「松本さんってやっぱり凄い人だな」と思ったんです。まず松本さんのことについて伺っていきたいのですが、普段どのような立場で仕事をされているのでしょうか?
松本:Coineyではコミュニケーション全体のデザインを担当していました。具体的にはアプリやウェブサイト、社内のマニュアルなどの制作をディレクションしたり、場合によっては自分でデザインしたり、コードを書いたりすることもあります。