──なぜ、そのスタイルで進めていこうと思ったのでしょうか?
金山: それは「ファッションを数値化する」という単一のミッションに向かって、腰を据えてやっている会社が世の中を見渡しても他にないと思っているからです。
過去を振り返っても似たような事例はないし、現在同じことをやっている人もいない。何が正解か分からない状態だからこそ、自分たちで正解を作り出していくアプローチが有効だと考えています。トライ&エラーを積み重ねていくしかないんですよね。
とはいえ、どうやって実現するのか。ここが大事な話なのですが、実現に向けて鍵を握っているのはデータです。ZOZOTOWNやWEAR、IQONというファッションメディアなどに蓄積されている大量の購買データや服の商品データを活用する。
スタートトゥデイグループは、服が倉庫に納品されると、採寸・撮影・検品作業を自社スタッフが独自の基準でやっています。これはZOZOTOWNのものさしで正規化された服のデータなんですね。
これらの関連性がちゃんと紐付かれているようなデータからパターンを見つけ、アルゴリズムを生み出していく。そこからさらに学習を進めてアルゴリズムを強化することで、最終的にいろんなファッションが数値化できると思っています。
その日、そのときの気持ちに最適な洋服が選べるようになる
ローランド・ベルガー プリンシパル 福田 稔
──そもそも、数値化とはどんなイメージを指すのでしょうか?
金山: 言葉自体がすごいぼんやりしていますが、「数値化=人間が取り扱うことができるようにすること」だと思っています。
まだ数値化できていないので、例えになってしまいますが、今日パーティーに参加するから少し派手な洋服を選びたいとします。そのとき、みなさんが考える「派手」のイメージは人それぞれ違うと思うんですよ。
実際のシチュエーションを想像しながら、自分の体形やクローゼットの中にある服を踏まえて、「こういうファッションをしよう」と、何かしらの基準をもとに大量の選択肢を並べて意思決定している。このプロセスも数値化できるはずだ、と我々は思っています。
服を着るときのシチュエーションや気分、目的にそれぞれパラメーターを与えて見える化する。それが数値化です。
──ファッションを数値化して、最終的にはそのユーザーに何かしらのメリットを提供する。あるいは消費者のファッションの楽しみ方を変えないと事業的にはプラスにならないということでしょうか。
金山:おっしゃる通りです。
──なるほど。先ほどの例は数値化されたデータがスタイリングのアドバイスに使えるという話ですよね。それ以外にユーザの視点でファッションの楽しみ方や利便性が変わるシーンはありますか?
金山: まず前提として、我々は服は何かしらの目的を達成するための道具だと思っています。具体的に道具としての役割は2つあります。ひとつはプロテクション。寒さから身を守ることや、社会的な視線から大事なところを隠すなどです。そこは割と他の会社がやってきました。