世界のリーデル社が日本酒専用「純米グラス」を開発した理由

マキシミリアン・リーデル リーデル家11代目当主。新商品である〈エクストリーム〉『純米』グラスを片手に。

「古代、クリスタルの杯で飲み物を飲めるのは王族や貴人のみでした。つまり、クリスタルのグラスは非常に貴重で、価値のある家財のひとつだったわけですが、いまでは一般の家庭にも普及し、コモディティ化している。ではどのようにリーデルにバリューを与えるか。

ということで、私の祖父である9代目のクラウス・リーデルが、グラスの形が酒の味わいに影響を与えるということに初めて気づき、グラスの形状とワインのキャラクターとの関係に着目した革新的な〈ソムリエ シリーズ〉『ブルゴーニュ・グラン・クリュ』(1958年)を開発したわけです。

それが、それまでは容器に過ぎなかったグラスが歴史上初めて“ツール”になったタイミングでした」と語るのは、オーストリアの高級ワイングラスメーカー、リーデル家11代目の当主であるマキシミリアン・リーデル氏。「私は家業を継ぎ、また次世代につなぐために生まれてきた」というが、そのイノベーティブな気質もやはり代々受け継がれているようだ。

「父である10代目のゲオルグ・リーデルは、クラウスの理念をさらに発展させ、ブドウ品種別のグラスを発表したほか、機械生産による精巧なワイングラス〈ヴィノム シリーズ〉を誕生させました。また私は2004年にステムレス(脚のない)ワインタンブラー〈リーデル・オー・シリーズ〉を発表。グラスの世界にひとつのイノベーションをもたらしましたが、今年、またも大きなチャレンジを達成しました」と、語りながら誇らしげに掲げるのは、日本酒用のグラス。それも純米酒専用のグラス〈エクストリーム シリーズ〉『純米』である。

「00年に大吟醸酒用のグラスを発表していますが、日本酒の魅力は大吟醸ばかりではないですよね? さまざまな日本酒の魅力をあますところなく発揮させるために、蔵元の方や日本酒の専門家の方々と10年にプロジェクトを発足。約8年の開発期間を経て、このほどようやく発表の機会を得ました」

そのグラスは複雑で奥深い純米酒の魅力を引き出すために、大ぶりで横長、飲み口の口径が大きく開いているのが特徴だ。

「こんなグラスで日本酒を飲んだらクールでしょう」と鼻をグラスに沈める様子はまさに貴公子然としているが、次なるイノベーションもすでに彼の頭の中には描かれているそうだ。飲み物をよりおいしくさせてくれるラグジュアリーなツールとしてのリーデルに今後も期待したい。


Maximilian J. Riedel◎1977年、オーストリア・ウィーン生まれ。リーデル家11代目当主。18歳のときから祖父である9代目クラウス・リーデルと父である10代目ゲオルグ・リーデルのもとでグラスメイキングと経営について学ぶ。2013年、リーデル社の社長に就任。


2018年4月18日には国内12店舗目となる直営店「リーデル銀座店」をオープン。40インチタッチパネル「グラスセレクター」がワインとグラスのベストマッチを双方向からナビゲートしたり、店内にある100種以上のグラスがすべて試飲可能だという、ワイン好きにはたまらない空間となっている。

リーデル銀座店
東京都中央区銀座6-2-1 Daiwa銀座ビル1階 
☎︎03-6264-6128

文・構成=秋山 都 写真=吉澤健太

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