ビジネス

2018.05.28

「次から気をつけます」は「改善」ではない──アマゾンのPDCA管理術

『アマゾンのすごいルール』著者 佐藤将之


──目標値の設定自体は、多くの企業でやっているはずですが……?

アマゾンがすごいのは、目標を達成するための要素も全て数値化することです。これが「x」にあたります。

例えば在庫品質という大目標を良くするための「x」は、商品を誤って棚に入れてしまった回数や棚出しに間違えた回数、一度棚に入れたはずの商品を別の棚に入れてしまった回数(これをアマゾンでは「プットバックエラー」と呼んでいます)などです。これらの細かい数字を常に観測し、「改善」するから、サービスの精度を絶えず高めることができます。

「x」を発見するためには、とにかく業務を因数分解しなければなりません。数字でKPIを表しているのになぜか効果が現れないという企業は、「x」の特定が不十分なのではないでしょうか。

──棚から誤って商品を取り出した回数まで数値化するというのは、すごいですね。

そのおかげで、実際に大きな「改善」も行われているんですよ。例えば、倉庫から落とした商品をその場で戻すことは一切禁止されました。発送のために倉庫から商品を取り出す際に、誤ってその横の商品を落としてしまったとします。その場合、落としたものを棚に戻すのではなく、新たに設置した「迷子ボックス」に入れなければなりません。

ボックスに入ったものは、後から担当者がデータを確認しながらまとめて棚に戻します。これは在庫品質という「y」を構成する数字の中でも、プットバックエラーの回数(x)が多かったから導入された施策です。

──その場で棚に戻してしまった方が、時間の削減になりそうですが……

いいえ。それは「改善」ではありません。不確定で曖昧な個人の「注意」に頼っても成果が出るかはわからないですよね。

ポイントは、プットバックエラーが多いからといって「商品を落とさないよう気をつけるように」と作業者に注意喚起するわけではないということ。システムそのものを見直さなければ、本当の意味で「数字に」はコミットできないのです。

文=野口直希 写真=小川哲汰朗

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