マクラーレンの最高傑作、アイルトン・セナを愛した日本で披露

増上寺で行われたマクラーレン・セナの発表会にて




その日本は、マクラーレンの世界で第3の市場だ。その首都のシンボル、東京タワーの足許にある神聖な仏閣で発表するとは、文句ない企画だった。 88年から93年までのマクラーレン=ホンダの提携。そのエース・ドライバーが崇拝され、F1のタイトルを競った鈴鹿サーキットがある日本、彼の意が活かされたNSX……。このハイパーカーに相応しいすべてが揃っていた。

では、そのマクラーレン・セナとは、どんなクルマなのか? スペックを見ると頭の中が沸騰しそうだ。

現行の720Sをベースとしながら、車重が100kg軽い「ザ・セナ」は、800PSを発生するV型8気筒4.0リッターのツインターボエンジンを車体のリアミッドに搭載。ハイテク技術で新たに採用されたエア・インテイク、高音での燃焼が可能な特注の軽量キャムとピストン、ハイフロー燃料ポンプを搭載する。

マクラーレンの発表では、わずか2.5秒で時速100km/h、6.8秒で200km/hに達し、最高速度は340km/hという。車重1198kgのセナは時速260km/hで800kgというレース業界でも一流のダウンフォースを発する。

これを可能にしているのは、ヘッドライトの下部に位置するアクティブ・エアロ・ブレードと、高速走行では平らになり、巨大6ポット・カーボンセラミックのブレーキが働くと自動的に縦方向に動き、エア・ブレーキのような働きをするリアウィングだ。

ただし、アイルトンと違って、このセナは決して美しいとは言い切れない。スタイルよりあくまでも機能を重視していると思う。スポイラー、エア・インテイク、リアウィング、ディフューザーのどれもが、最大のダウンフォースと最小限のドラッグを目的にデザインされ配置されているからだ。



事実、720Sに筋肉を隆々と盛ったようだ。しかし、英国のシルバーストーン・サーキットで実際にプロトタイプに乗った同僚は、セナは現存するどのハイパーカーよりも優れたハンドリングで安定性が高いと言っている。

昨年末に世界で500台限定、価格約1億円で販売されたハイパーカーをゲットしたオーナーのうち、日本人は何人いるのだろう。彼らは金脈を発見したにも等しい。なぜなら、ブラジル人に負けないくらいアイルトンを崇拝する日本では、このハイパーカーの価値は想像を絶するほど高くなるに間違いないからだ。

国際モータージャーナリスト、ピーター・ライオンが語るクルマの話
「ライオンのひと吠え」 過去記事はこちら>>

文=ピーター・ライオン

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