食に関するユダヤ教の規定では、肉は牛乳やチーズなどの乳製品と一緒に取ってはいけないことになっている。だが、インポッシブル・バーガーは植物由来の原料だけでつくられているため、チーズを使用していても認証を受けることができた。使用するチーズのほか調理器具がコーシャ認証を受けたものである限り、同社製品はコーシャの規定に従った食生活を送る人たちにとって、「食べて良いもの」ということになる。
コーシャ認証団体の一つであるオーソドックス・ユニオン(Orthodox Union)の代表者は今年に入り、カリフォルニア州オークランドにある面積およそ6220平方メートルの同社工場を視察。材料、製造工程、使用している設備の全てが、モーセの律法トーラー(モーセ五書)に基づくユダヤ教の食についての規定に従ったものであることを確認していた。
また、同社は年末までに、イスラム教の戒律に基づいたものであることを示すハラル認証も取得したい考えだ。
「地球のために」目指す消費拡大
インポッシブル・フーズによれば、植物由来の材料で牛ひき肉の味を再現した同社の製品は、生産量が1カ月当たり約227トン。すでに需要が供給を上回っている。今後はシフトを2交代制に変更し、増産に乗り出す計画だという。
インポッシブル・バーガーは、水と小麦タンパク質、ジャガイモタンパク質、ココナツオイルといったシンプルな植物性の成分から作られている。そして、まるで牛肉のような味を生み出しているのは、重要な原料の「ヘム」だ。ヘムは動物の血液のほか、植物にも含まれている分子。同社は発酵を通じて植物由来のヘムを合成し、製品に使用している。
同社によれば、米国のハンバーガーチェーン、ホワイトキャッスル140店舗のメニューにも、4月から「インポッシブル・スライダー」が加わった。インポッシブル・バーガーはその他にも、いくつかの高級店を含む国内のレストラン約1500軒で提供されている。同社は最終的に、消費者の手に直接届くスーパーマーケットでの販売を目指している。
インポッシブル・バーガーの消費によって、地球と土地や水などといった天然資源への影響は、畜牛を飼育して食肉処理する場合に比べて大幅に抑制することができる。インポッシブル・フーズが事業において主眼を置くのはその点だ。