ビジネス

2018.05.25

仮想通貨イーサリアム「24歳の天才」を支える日本人2名

左から宮口礼子、ヴィタリック・ブテリン、長谷川潤


その後、Omiseが直面したのがタイ特有のオンライン決済の煩雑さだ。タイではEコマース決済にカードを用いることに抵抗を感じる人も多く、ATMからの振込が主要な決済手段だった。そんな中、フィンテック領域に事業転換したOmiseはモバイルベースで使える新たなソリューションを探していた。そしてヴィタリックとともにイーサリアムを開発したチームに出会った。

「これだけインターネットが広がっているのに、価値交換の分野は分断されたままだ。既存の金融機関に頼らず価値交換ができるプラットフォームを作りたい。そのアイデアを現実にできるのがイーサリアムだった」

その後、15年にOmiseはイーサリアム財団に10万ドルを出資。本格始動したばかりのイーサリアムに初期から関わった。

ヴィタリックによると、イーサリアムのコミュニティは急速に規模を拡大したという。ビットコインとは違い、仮想通貨以外のデータもやり取りできるのがイーサリアムの特徴だ。また、スマートコントラクト(自動実行型の契約)を用いれば、様々な手続きを自動化できる。

「イーサリアムを発案した13年当時、仮想通貨といえばビットコインしか知られていなかった。しかし、その後3年で様々なプロジェクトが始動した。予測市場システムの『オーガー』や経済インセンティブつきの評価システムの『TrustDavis』、さらにはベーシックインカムを扱うものもあった」

100億円消失事件を乗り越えて

一方でその頃、全く別の角度から仮想通貨が抱える課題に取り組んだのが宮口だ。14年2月、東京の取引所「マウントゴックス」から100億円を超える価値のビットコインが消失し、経営破たんした。

「この問題に対処できるのは自分しか居ないと思い、日本の当局に連絡をとった。放っておけば仮想通貨そのものに欠陥があるという誤った認識が広まってしまう。『明日にでも来てほしい』と言われ、サンフランシスコから東京に向かった」
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取材・文=上田裕資 写真=ヤン・ブース

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