ビジネス

2018.05.25

人とアイデアを最速で繋げる「ノールックパス」

Nong Mars / shutterstock


メルカリユーザーのノールックパスの輪

例えばメルカリでは、一部のユーザーの間で「洋服を買うならこの人のアカウントから買う」という風に、毎回同じ販売者から購入するケースが増えているそうです。

そもそも洋服とECサイトは相性があまりよくなく、サイズ感の違いなどで購入に踏み切りにくいものなのですが、メルカリで一度取引をして、「この人の出品している洋服はどれも好き、サイズもピッタリだし、梱包も丁寧」と信頼されると、次からも同じ販売者から購入するようになるのです。

すると、販売者も新しく洋服を選ぶときに「あのユーザーさんがメルカリで買ってくれるし」と想定して購入する、ということが起きてきます。購入する側もまた、「私の次はあのユーザーさんが買うだろうな」と気軽に購入します。まるでシェアするような感覚で、10人くらいのユーザー同士で、一つの洋服がぐるぐる回っているそうなのです。

きちんとした信頼関係が築けてくると、購入することへの不安がなくなります。それに販売者も、購入してくれた人とのコミュニケーションが簡略化されていくのでコストがかからず、まるでノールックパスのように、洋服を販売し、購入し、またメルカリで販売する、というような、自分のセンスを素早く低コストで分かち合えるコミュニティができるのです。

信頼しあえる関係では、何をしても低コストです。ビジネスシーンでノールックパスの速さに慣れてくると、自分の周りでどんどん化学反応が増え、相乗効果が増し、気がつくと大勢の人を巻き込んでいきます。この状態のことを、僕らの間では「確変モード」と呼び合っています。

パスが回れば回るほど、その人の個性がどんどん際立ち、「次はこんな人に会ってみて」「こないだこんな人と知り合ったんだよ」と楽しい話がどんどんやってきます。相手を信頼することによって、実は自分の可能性が広がっていくのです。

連載 : 働き方革命最前線──ポストAI時代のワークスタイル
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文=尾原和啓

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