大企業の不正を暴く! ノンキャリア女性を突き動かしたものとは

映画「エリン・ブロコビッチ」主演のジュリア・ロバーツ(Featureflash Photo Agency / Shutterstock.com)


かつてはミスコンの女王で、いつも抜群のスタイルを生かしたセクシーなミニスカートに派手なネイルを決め、思ったことをズバズバと口にするエリン。

「君のファッションに反感をもつ者も」と注意を促すエドに「私は好きな服を着る」と主張し、隣の家に越してきたジョージの好意を、あけっぴろげの喋りで軽くいなす態度は小気味良い。

ある日、書類の整理中に、不動産売却の書類に健康状態のデータが添付されているのを不審に思ったエリンは、PG&E社に家を売ることになっているジェンセン夫妻宅を訪問し、安全な3価クロムを排出していると説明する社が健康診断費用を払っていることを知る。

夫妻の体調不良に違和感を抱いたエリンは、UCLAの教授を訪ね、健康被害を及ぼすのは6価クロムとの知見を得て、今度は地区の水質管理局へ。そこで膨大なデータをじっくりと調べ上げ、PG&E社の工場が長年に渡って有害なクロムを排出し、地域を汚染してきたのではないか、という重大な疑惑を突き止める。

一旦「これはおかしい」という疑問を抱くと、専門知識に欠けていても必死に書類と頭を突き合わせ、納得が行くまで人に尋ね、脚で稼いで情報を集め、孤軍奮闘で問題の根っこを追求しようとする一連の場面から、ヒロインのガッツと生真面目な性根が浮かび上がってくる。

調査に夢中になり過ぎて一週間ぶりに出社すると自分の席はなくなっていたが、「ジェンセン夫妻は汚染された水を飲んで健康を害した」「PG&E社は嘘の説明を住民達にしていた」という情報を掴んできたことで、再就職と昇給と保障をエドに要求、エドもようやく彼女の働きを認め、PG&E社の告発に向けて事務所を上げて動き出すことになる。

面会に来たPG&E社の弁護士は、破格でジェンセン夫妻宅を買い上げると約束したものの汚染の責任は認めず、対決の構図が明確になっていく中で、エリンとエドは住民への説明会を開き、戸別訪問して聞き取り調査に励む。長期戦になる予感の中で、エリンは証拠集めに走り回る。

9カ月後、住民に対するエリンの粘り強く地道な働きかけが実を結び始め、原告団は100人を越えていた。

一人一人の不安や苦しみに共感を示し、丁寧に話を聞き出し、共に闘おうと鼓舞する。それを何カ月も行っていくのには行動力と忍耐力だけでなく、嘘と不正に対する怒りの持続力が必要だ。口で言うほど易しいことではないだろう。

彼女の真摯な態度が、徐々に住民たちを動かしていくシーンの積み重ねによって、エリンという女性が仕事の中で学び、自信を得て、成長していく姿に勇気づけられる。

そして昇給によって法律事務所の職員らしくジャケットスーツなどを着るようになっても、相変わらず美脚と胸の谷間を堂々とアピールし、大口開いて笑ったり喰ってかかったりする表情の豊かさは、変わらない彼女の持ち味として光っている。
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文=大野左紀子

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