ビジネス

2018.05.23

スタートアップxお役所仕事 異文化コラボだからできること

Urban Innovation KOBEのワークショップの様子


サンフランシスコ市役所の福祉担当部局は、身寄りのない子供の「里親」になることに関心を持つ市民が利用するスマホ用アプリを、BINTIというスタートアップとともに開発した。里親を希望する候補者と市役所とのやり取りをデジタル化して、作業時間の短縮が図られただけでなく、なんと里親への応募数が3倍となったという。

ブラックボックスに見えがちな行政の手続きが透明化され、潜在的な希望者が掘り起こされた結果といえるだろう。BINTIは急速に全米に拡大し、既に40の自治体で導入されている。

サンフランシスコ市は、テクノロジーの先進地シリコンバレーに近いという地の利を生かしながら、自らが軸となり世界的なスタートアップに成長の機会を与えている。まさにスタートアップにフレンドリーという意味でのブランディングを行い、世界中のスタートアップの注目を集めようとしている。

米有力ベンチャーキャピタルの「500 Startups」と連携して起業家育成プログラムを行う神戸市は、2017年8月、「Startup in Residence(STiR)」をモデルに、スタートアップ企業と地域課題を解決する国内初のプロジェクト「Urban Innovation KOBE」を立ち上げた。

スタートアップの育成に舵を切る2015年以前から、神戸市はサンフランシスコ市の取組みに注目し、事業化を目指してきた。冒頭で触れた「さぽのる」はその成果でもある。

また2018年4月には、「三宮周辺の都心部(約8万4千世帯)におけるソーシャルネットワークの構築」「行政窓口をスムーズに案内できるツール(区役所UX/UI改善実験)」など新たな8つのテーマを公表し、全国のスタートップからアイデアを募集している(5月27日まで)。

挙げられた8つのテーマは、いずれもさまざまな解決手法が想定され、どのように取り組むのかは議論を尽くす必要がある。仕様書を書いて発注できるような単純なテーマではない。試行錯誤やテストマーケティングを繰り返しながら開発しなければならず、大手ベンダーは苦手とするところだけに、全国のスタートアツプ企業からどんなアイデアが集まるかが楽しみだ。

連載 : 地方発イノベーションの秘訣
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文=多名部重則

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