神戸市は5月14日から、要介護の高齢者やケアマネージャーが介護タクシーなど民間搬送事業者をリアルタイムで検索・予約できるスマホ用アプリ、「さぽのる」の実証実験をスタートさせた。
同市消防局によると、救急車の出動件数は年々増加しており、1日200件を超えている。今後、自力で病院に行けない高齢者が増えることが予想され、緊急度の低いときには救急車以外の手段で病院に行けるよう、民間の搬送サービスを拡大させたい考えだ。
そこで、高齢の要介護者でも、救急車以外の移動方法を検索できるアプリを開発した。どこからどこまで運んでほしいのか入力すると、利用料金、搬送業者の一覧が表示される。車いす、ストレッチャーが必要なときは、それを備えた事業者を検索できる。
これには民間介護タクシー事業者など20社も参加した。そして、このアプリを開発したのは、大手ITベンダーではなく、なんとわずか2名のエンジニアが創業したばかりのスタートアップ企業だ。
新開発のアプリで里親への応募が3倍に
いうまでもなく、スタートアップ企業は、この手のまだ世に存在しないアプリを開発するのが得意だ。開発を進めながら、顧客のニーズを取り入れ、真に選ばれるサービスを創りだそうとする文化を持つ。
エンジニアをメンバーに含むので、自社内で開発を行い、高速で仮説検証サイクルを回すことができる。自治体が作成した仕様書をもとに開発を行う大手ベンダーとは真逆の思考回路なのだ。
海外では、行政とスタートアップが共同開発を行う事例が拡大している。テクノロジーの先進地である米カリフォルニア州では、2016年からサンフランシスコ、オークランド、サンレアンドロ、ウェストサクラメントの4都市が「Startup in Residence(STiR)」というプログラムを始めた。
この「Residence」とは「市庁舎」を意味し、文字通り「市役所の中のスタートアップ」という意味合いをもつ。テクノロジーを駆使した自治体業務の改善が狙いだ。このプログラムは、まず行政側が課題と考えるテーマを提示し、それを解決できるアイデアや技術を持つスタートアップ企業が応募する。
次に選定されたスタートアップ企業が、市の担当者とともに4カ月という期間でプロトタイプを開発し、ユーザーテストを経て具体化。最後に市とスタートアップが実用化にGOサインを出したときは、行政が予算化して利用する。2018年には、米国11都市に広がり、30のスタートアップと連携が成立している。