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過日、私はMITメディアラボの教授や学生10人あまりとケニアの首都ナイロビへ飛んだ。メディアラボでは毎年、中東やインドなどで現地の研究者や学生と一緒に研究をする「イノベーション・ワークショップ」を開いている。今回はケニア人技術者らと交流を深めてきた。

 ナイロビではプログラミングをし、ハードウェアをつくる優秀な技術者と数多く出会えた。またワークショップでは、野生動物を密猟者から守るための追跡ソフトを開発したり、義足の技術提供をするなど、現地のニーズに即した研究をともに進めることができた。
 そして、アフリカでのワークショップを経たいま、私はある実感を強めている。イノベーションは大企業からスタートアップ企業や個人の手に移りつつある――。コンピューターと通信のコストが下がり、サプライチェーンが改善され、開発プロセスが効率化された結果、主にふたつの分野で大きな変革が起ころうとしているのだ。

 ひとつ目は、コンピューターやクルマをはじめとした「ハードウェア」の分野である。融資サイトで起業資金を得たり、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械が入手できるようになったことで、ベンチャー企業にとっても、個人にとっても「ものづくり」は比較的容易になった。製造や流通を外注することでコストを抑えられるようにもなった。それにより、元は非製造業でありながら、グーグルやアマゾンのように、タブレット型PCやウェアラブル端末、自動運転車の開発へと裾野を拡げる企業が増えている。
 ここで重要なのは、この"ハードウェア革命"を主導しているのが、ソフトウェアの開発企業であるという点だ。彼らは、標準化した部品を組み合わせて製品を設計する「モジュール化」をハードウェアの世界で進め、製造や輸送にかかるコストを下げることに成功した。徐々にだが、インターネットのサービスのように効率よく開発できるようになっている。ハードウェア開発に参入するベンチャー企業が急増しており、2014年は「ハードウェア・ベンチャー元年」になるかもしれない。

 そして、ふたつ目が「バイオテクノロジー」の分野だ。コンピューター開発は、メモリーやプロセッサーなどの半導体の性能が1、2年で倍増する「ムーアの法則」に則って驚異的な進歩を遂げてきた。ところがバイオは、その6倍の速さでコストが下がっている。
 例えば、ハーバード大学の分子遺伝学者、ジョージ・チャーチは、ゲノム工学の専門書を遺伝子構成要素のコードに置き換えて、「メモリー」代わりに使うことに成功している。つまり、その遺伝子を解析すると、本が読めてしまうのだ。バイオテクノロジーは、これほどまでに進化している。
 やはり、バイオエンジニアリングもハードウェアと同様に、イノベーションが大企業からベンチャー企業へと流れていくだろう。アメリカでは合成生物学の世界大会「iGEM(アイジェム)」のように、高校生や大学生が遺伝子を組み合わせて独創性や社会的意義を競うコンテストも開かれている。独自に遺伝子実験をするアマチュア科学者も増えている。今後、バイオテクノロジーは製薬会社や病院の専売特許ではなくなり、ベンチャー企業から世界を変えるアイデアやプロダクトが生まれる可能性がある。実際、遺伝子組み換えでつくったバクテリアと電子機器を組み合わせた製品をつくっている学生もいる。

 このように、ハードウェアとバイオテクノロジーが融合し、さらには、エレクトロニクスと結びつくことが考えられる。これからは、そのすべてを理解できる人材が必要になるはずだ。
 冒頭で紹介したナイロビのワークショップは、ハードウェアの研究が中心だった。でも、来年はバイオテクノロジーの方にも取り組んでみたいと考えている。

伊藤穣一

 

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