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ㅤ鎌倉市在住のフリーランスライター兼編集者


実際、アメリカでTOTOブランドが認知された理由は、高い節水技術にある。日本にはいまでもトイレの洗浄水量についての規制がないが、アメリカでは水不足に悩む地域が多く、92年に制定されたエナジーアクト法により、新規のトイレは洗浄水量が6リットル以下に制限された。

当時の米国メーカーが規制に合わせて単に1回の洗浄水量を6リットルに下げる(つまり二度流す必要がある)一方、TOTOは日本で培った節水技術を活用し、6リットルでも一度で洗浄できるアメリカ向けの節水便器を開発。その後、2002年に公表されたアメリカの調査機関による大便器洗浄試験結果で1〜3位をTOTO製品が独占したことにより、一気に信頼が高まった。

中国では17年11月、習近平国家主席が「トイレ革命」を発令。だが、TOTOはそれ以前から「TOTO水環境基金」を設立し、中国でも給水設備建設支援や、子ども向けの節水教育、政府向けの節水啓発などに熱心に取り組んでいる。そのような長期戦略が功を奏したのだろう、17年の海外住設事業の営業利益(計画値)は250億円と、09年から3.4倍にも膨らむ見込みだ。

工場見学後、TOTOミュージアムに向かった。ここは水まわりの文化や歴史とともに、TOTOのものづくりへの想い、製品の進化が一望できる展示が常設されている。喜多村曰く「社員が創立の精神や歴史をきちんと理解できるように」と考えてつくられたそうだが、一般客や訪日外国人の来館も非常に多い。現在までに約20万人が足を運んだそうだ。

トイレの歴史は、「生活文化の向上」の歴史そのもの。それを海外の人がこぞって見に来るのは、日本の製造業の誇りでもある。

「これからも技術で引っ張っていく会社でありたい。20年もつ商品をつくる。それが100年続く企業をつくるということ。20年後の買い替えの際に、もう一度TOTOのトイレを買ってもらえるかが勝負です」

創立者が説いた「良品の供給、需要家の満足」は、16代目社長の言動すみずみに息吹いていた。


きたむら・まどか◎1957年、福岡県生まれ。81年、長崎大学経済学部を卒業後、東陶機器(現TOTO)に入社。経営企画部長を経て、2008年より執行役員浴室事業部長に就任し、事業立て直しに手腕を発揮。11年には取締役常務執行役員に。14年4月より現職。

文=堀香織 写真=佐藤裕信

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