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2018.05.27

廃墟ビルで魚と野菜を同時に育てる、オランダで見た農業のカタチ


ビルの屋上にあがると、そこには大きな水耕栽培のグリーンハウスがあります。レタス、きゅうり、トマト、なすなど20種類近くの野菜が育てられ、とてもビルの屋上とは思えない風景が広がっています。水耕栽培は草むしりや水やりなどの必要がなく、虫もつきにくいということで、環境負荷が非常に低いことが特徴です。


ビルの屋上に広がるグリーンハウス

植物が栄養を取り込み綺麗に浄化された水は、ビル内の魚が泳ぐ水槽に戻され、再利用されます。このように魚養殖と水耕栽培を融合させた循環型の農業を「アクアポニックス」といい、地球にもっとも優しいシステムとして世界的に注目を浴びています。

水は循環させているので換える必要がありませんし、魚のフンを栄養分として使うので肥料も必要ありません。また農薬を使っていないので(魚が死んでしまうので当然といえば当然)、完全なオーガニックを実現。都市部のビルで生産が可能なので、フード・マイレージもかなり抑えることができます。

とれたての野菜を洒落た併設カフェで
 
グリーンハウスに併設された開放的なカフェスペースでは、とれたての野菜やそれらを使った料理、コーヒーやビールなども提供されていて、ゆっくりくつろぎながら新鮮な食材を楽しむことができます。実際に野菜を注文しましたが、どれも新鮮そのもので本当に美味しい! ビルを巡り生産過程を見てきたばかりなので「安心、安全」という精神的な満足度も高まります。


収穫されたばかりの新鮮な野菜をその場で食べることができるカフェ

今後はビル内に本格的なレストランやホテルを作る計画もあるなど、よりエンターテイメント性の高い施設に成長させていくそうです。

ショップではオリジナルのトートバッグやエプロンなどのグッズも販売されているのですが、どれもお洒落。ロゴやパンフレット、空間デザインなど、すべてのクリエイティブレベルが高いのもUFの特筆すべきところです。



まるでテーマパークに来たかのような楽しい時間を過ごしながら、最新の農業や食について学ぶこと(子供の食育にも最適)ができる。そして適正なプライスで安心・安全な食材を手に入れ、地産地消も実現し、地球にやさしい暮らしができる。本当に良いことづくしのプロジェクトです。

もちろん海や川で獲れた魚、大地で育った野菜を食したい……という気持ちもあるかと思います。

ただ、都市部では農地を確保するのが難しく、魚も野菜も地産地消されない限り、輸送によって環境に負荷がかかります。さらに大地で育った野菜であっても、農薬や化学肥料を大量に使っている場合もあり、何が人々や環境に優しくて、何が優しくないのかという判断は、一側面だけでは判断できません。

Urban Farmersのようなアーバンアグリカルチャーのプロジェクトを通して、自分たちが食しているものがどのように作られ、運ばれ、販売されているのかを知り、少しでも環境負荷の少ない選択をする人が増えれば、サステナブルな社会の実現にほんの少し近づけるのではないでしょうか。

文=国府田淳

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