「フランスの孫正義」も支援
日本では「フランスの孫正義」と呼ばれる通信業界の大物起業家のグザビエ・ニールも、当時からマクロンに、莫大な金額を支援することを約束していたという。マクロンはその頃から次期大統領を目指す野望を抱いていたと、関係筋の一人は話した。
そして2017年5月にマクロンはフランス大統領に当選。その1カ月後の6月にマクロンはニールから出資を受けた「ステーションF」の立ち上げを宣言した。.
スタートアップ関係者がつめかけた会場でマクロンは、「今から3年前に、私は妻のブリジットに政界から身を引き、会社を立ち上げるつもりだと話していた」と述べた。
「私は起業家になるつもりだったんだ。その事はニールも証言してくれるだろう。でも、その後状況が変わった。当時はステーションFのアイデアは無かった。私は言うなれば、“ピボット”というのを行なったことになる」と、マクロンは笑顔で話したという。
マクロンにピボットという言葉を教えたのは、スナップチャットの運営元の「スナップ」に地図ソフト企業の「Zenly」を約2億ドルで売却したAntoine Martinだという。「その頃のマクロンはピボットという用語を知らなかった」とMartinは当時を述懐する。
2014年夏頃にマクロンと話した人物は、彼がスタートアップ領域に強い関心を抱いていたと話す。「彼はいろんな質問を関係者に問いかけていた」と彼は話した。
マクロンが現在の地位にのぼり詰めた背景には、政治的な偶発性も関わっている。2014年8月に当時のオランド政権の経済大臣だったアルノー・モントブールが解任され、その職をマクロンが引き継いだ。
「オランドにとってマクロンは必要な人材だった」と関係者の一人は述べた。そんな流れのなかで、現在のマクロン政権とスタートアップ立国を掲げる新時代のフランスが誕生したのだ。