フォーブスジャパン コントリビューティング エディター/ライター


橋本や田村の本気に触れて、「やる気に火がついた」という田端は、計画行政の文脈では最も大切だと言われている“効果”や“成果”は全く未知数だったが、その衝動に突き動かされるままに富田町長に考えをぶつけたという。

「『何かが変わりそう』『彼らと一緒にやり遂げたい』というワクワクに駆られたのは今でも忘れられません。町長は彼らの熱量を十分感じ取ってくれ、『地域の外から人や情報が新しく加わることで、対象者である子どもたちにとっても素晴らしい時間・刺激になる。町をあげて支援します』と意思決定してくれて。『YOKOZE CREATIVITY CLASS』の開校が決まった瞬間でした」(田端)



橋本は言う。

「最初は横瀬でクリエイティブソンをしようという話をしていたんです。でもそれだけだと結局、一過性のイベントになっちゃうんだよねって話になって。そこからしっかり教育につなげて、子供たちにデザインや映像、ライティングなどのモノ作りを学べる場を継続的に実施しようというふうに話が発展していった。

そんな構想を東京でいろんなクリエイター話していったら、19人ものクリエイターが面白がって参加してくれた。なかには賞を受賞している人もたくさんいますよ。横瀬で凄いものが生まれる予感しかしなかった。その舞台は僕の地元ですからね。ゾクゾクしましたよ」



17年4月22日、23日、第一弾として中学校の体育館で、「クリエイティブソン」を開催。地元からは中学生と町民が参加。富士通総研の佐々木哲也を中心に実行し、多数のクリエイターがワークショップ形式で2日間、町民とともに見つけた地域課題をもとにクリエイティブの考え方や技術を教えた。

その後、横瀬中学校では7月から10月に計10回に及ぶ授業が行われ、クリエイターは横瀬に行って教えた。そして、9月に数週間かけて集大成となる映像作品を制作。11月の成果発表会で紹介、3月に作品リリースとプロモーションを行い、アワードに出展。その作品が、DESIGNAWARDS.ASIAにおいてDESIGN OF THE DAYを受賞したのである。

「目的の一つは地域活性、もう一つは地域の子供たちのキャリア教育ですね。横瀬の中学生たちが大人になっていく中で、クリエイターにならなかったとしても、クリエイティブの基本の知識と、ものの見方、自分で作れるスキルを持っていることは、人生に必ずプラスになる。少なくとも僕らはそう信じている」と橋本は言う。

さらに今年からは、地元の商店主や職人など地域の職業人も講師に加えた「はたらクラス」もスタートした。秩父エリアの情報発信サイト「ちちぶる」編集長の浅見裕、家具デザイナーの加藤健太らをはじめ、地元メンバーを中心としてより町民を巻き込み、横瀬クリエイティビティークラスをより発展させた取り組みだ。小学生から大人まで誰でも受講できる。

将来、横瀬出身のクリエイターが、より多くの仲間のクリエイターを呼んで横瀬に集まり、地域の職業人とコラボして、様々な作品やイベントが生まれていくことになるだろう。

キャリア教育はもちろん、これからのクリエイターのあり方を見直し、サステナブルな地方創生を、彼らはクリエイトしたのだ。

文=嶺竜一

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