ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)の認可を受け、ジェミニは米東部夏時間(EDT)5月19日からZcash向けの口座への入金を受け付ける。
ジェミニは、全米48州、ワシントンD.C.、プエルトリコ、カナダ、香港、シンガポール、韓国、英国で認可を受けている。同社は、5月22日午前9時30分よりZcash(ジーキャッシュ)の取引きを開始する。
NYDFSは、ジェミニに対してビットコインキャッシュとライトコインの取り扱いについても認可することを明らかにしているが、詳細はまだ不明だ。これらの仮想通貨の時価総額は、ビットコインキャッシュが250億ドル、ライトコインが82億ドルとなっている。
ジェミニの社長であるキャメロン・ウィンクルボスによると、今回の認可取得はNYDFSと密接な連携を築いたことで実現したという。彼は書簡の中で次のように述べている。
「ジェミニはZcashを扱う世界初の公認取引所となり、NYDFSはZcashの取引きを監督する世界初の政府機関となる」
ウィンクルボスは書簡の中で、Zcashの特徴である匿名性の高さについても触れている。それによると、Zcashは「zk-snarks」と呼ばれる技術を使うことで、ビットコイン同様に確実性の高さを担保しながら、送金者と受金者がアドレスを非公開のまま取引を実行することを可能にしているという。「zk」とは、「zero-knowledge(ゼロ知識)」を意味する。
匿名性の高さから、Zcashは犯罪組織や名前を秘匿したい投資家などにとって都合の良い仮想通貨となっており、批判する人も多い。Zcashの1日の取引高は3240万ドルに達する。zk-snarkは、Zcash以外にもJPモルガン・チェースが開発したブロックチェーンプラットフォーム「クォーラム(Quorum)」をはじめ、いくつかのオープンソースプロジェクトに用いられている。
Zcashは、匿名性を高めるためにシールドされたアドレスとアンシールドのアドレスを使用している。アンシールドなアドレスは透明性を持つが、シールドされたものは匿名性が非常に高い。ジェミニは、これら両方のアドレスからの入金に対応するが、引き出しはアンシールドのアドレスに限定するという。
「将来的にはシールドされたアドレスへの引き出しにも対応したい」とウィンクルボスは述べている。
NY州のリーダーシップを示す
ジェミニが新たに取り扱いを開始する仮想通貨は、全てビットコインのコードベースをもとに構築されており、ウィンクルボスは仮想通貨の父の名にちなんで「ナカモト・ファミリーツリー」と呼んでいる。
ジェミニは、他にも時価総額740億円のイーサリアムの取引きを行っている。「CryptoCoinCharts」のデータによると、ジェミニは世界で13番目に大きい仮想通貨取引所で、市場シェアは1.65%だという。
今回の承認に先立ち、NYDFSはニューヨーク州の仮想通貨事業者に対するライセンスである「BitLicense」を「サークル」や「リップル」、「コインベース」、「ビットフライヤー」に対して交付している。BitLicenseの取得に要する費用は高額で、スタートアップにとっては大きな参入障壁となっている。
NYDFSのMaria Vullo局長は、ジェミニへの認可について次のように述べている。
「ニューヨーク州は、グローバル市場におけるイノベーションとリーダーシップに長年に渡ってコミットしており、今回の措置もその公約に基づくものだ。我々の優れた監督により、仮想通貨業界は長期的に発展していくだろう」