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2018.05.23

政府の無策でネパール大地震の被災者にのしかかる「借金地獄」

チャウタラ近郊での住宅再建の模様

約9000人が犠牲者となったネパール大地震から3年が過ぎ、現地では貧困による「人身売買」が広がっているのだが、自国のみならず、被害者女性たちの多くが連れて行かれるインドでも、政府は「人身売買の撲滅」を訴え、取り締まりの強化をアピールしている。

とはいえ、それでも「人身売買」がいっこうに減る傾向にないのは、それだけ原因となっている貧困が深刻化していることでもある。

言うまでもなく、その背景にはネパール政府の無策さがある。大地震から3年を経て、ようやく住宅再建も本格的に動き出したように見えるが、工事のために高利貸しからの借金を強いられた人たちも多く、さらなる重圧が被災者たちにのしかかっている。

ネパール政府が「復興」を声高に言う一方で、その足元はもろく、放置すれば足場が崩壊するのは必至なのが実情だ。

支援金を得るために高利貸しから借金

地震の最大被災地であるシンドパルチョーク県の県都チャウタラへは、首都カトマンズから車で3時間以上、山道を走らなくてはならない。ネパールには車の通れるトンネルはなく、道路は急峻な山道を縫うように通っている。舗装のない道路では、大きな揺れの連続で何度も座席からひっくり返りそうになるほどだ。

ようやくたどり着いたチャウタラ近郊の集落では、あちこちで家の再建作業が進んでいた。集落にあるのは47世帯。とりまとめ役のトク・スレスタさん(48)によると、地震で全世帯の家が倒壊し、2人が死亡したという。

政府の援助が届かず、昨年夏までは住宅再建は手つかずだったが、その後から一気にペースが進んだ。「何軒かがまとまって共同で建築資材を購入し、安く仕入れることができるようになった。専門知識のある石工も指導してくれている」スレスタさんはそう話し、雨期の始まる7月までに再建が完了することに自信を見せた。
 
集落の世帯をグループ化するとともに、石工を養成して再建の指導に当たらせるといった取り組みは、国際協力機構(JICA)の支援で行われている。支援の対象地区では、再建の着工率が8割を超えた。

だが、そうした「モデル地区」でも、住民の不安は消えていない。集落に住む50代の男性は、住宅再建の費用として20万ルピー(約20万円)を借りた。利子は30%。男性の月収が約3000ルピーであることを考えれば、それがいかに無謀な借金であるかがわかるだろう。
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文=佐藤大介

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