たまらなく深い愛おしさを胸に、子どもの様子を見つめながら、親はこのように考えるのだ。親が子どもに願う「ほしい」は尽きない。自分のことは棚にあげて、子どもにはもっと、もっと、◯◯して「ほしい」と思ってしまう。
子どもの教育は親の責任という家庭教育至上主義が、いまだに根強い日本。子育て本も、世の中には溢れている。親は不安なのだ。親としてどのように子どもに関わるべきなのか、と。
双生児法による衝撃的な調査結果
人間の性格は、5つの基本的特性によって捉えることができるとされている。いわゆる「ビッグ・ファイブ」と呼ばれる因子であり、「外向性」「情緒不安定性」「開放性」「調和性」「誠実性」が挙げられる。
多くの友人をつくり、コミュニケーションをとるのが得意な子どもは外向性が強く、おとなしい子どもは外向性が弱いのかもしれない。真面目にコツコツ取り組む子どもは誠実性が強く、逆に不真面目な子どもは誠実性が弱いのだろう。
好奇心が旺盛で何にでもチャンレンジする子どもは開放性が強く、慎重な子どもは開放性が弱いといえる。誠実性や開放性が高い人は社会的業績をあげやすいということもわかってきている。これらの因子のバランスで、子どもの性格も決まっているのだ。
それでは、ビッグ・ファイブを含む性格は何によって影響され、決まるのだろうか。行動遺伝学では、人間というのは、遺伝+共有環境+非共有環境、で説明できるとされている。遺伝は言うまでもないが、共有環境とは家庭教育や親の影響、非共有環境は子ども自身の体験などのことを指す。
遺伝と共有環境、非共有環境がどのような強弱で、性格に影響を与えているのか。一卵性双生児と二卵性双生児の類似性を比較することで遺伝の影響を調べる双生児法で、明らかにされている。行動遺伝学に関する多くの論文・著書を有する安藤寿康氏等の調査によると、その結果は、衝撃的だ。
約30%〜50%が遺伝、その他は非共有環境。共有環境の影響はみられず、すなわち家庭における親の子育ての仕方は、性格形成には影響を与えていないということになるのだ。子どもの性格は遺伝と非共有環境によるものであり、それらを前にすると、親は無力にすら見える。