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2018.05.24

廃墟と化す「既存不適格マンション」 それでも建て替えが進まない理由

kurosuke / Shutterstock.com


マンションの建て替えには、他にも様々な阻害要因がある。区分所有法では、5分の4が賛成すればマンションの建て替え決議は可能だということになっている。反対する人の権利を買い取る(売り渡し請求)こともできる。

しかし現実問題として、実際の現場では、買い取り価格を吊り上げられてしまったり、「ここで一生を終える」とおっしゃる高齢の方や、建て替え費用が捻出できない方がいたり、建物の老朽化を賃貸契約解消の正当事由としない借地借家法が立ちはだかり賃貸人がなかなか出ていかない、など様々な理由からマンションの建て替えがうまく進まないのだ。

マンション(RC/鉄筋コンクリート造)の寿命には諸説ある。例えば、117年(飯塚裕/1979「建築の維持管理」鹿島出版会)、68年(小松幸夫/2013「建物の平均寿命実態調査」)、120~150年(大蔵省主税局/1951「固定資産の耐用年数の算定方式」)など。実際には配管の種類や箇所にも大きく左右されるが、思いのほか長持ちするイメージだろう。

しかしいずれにせよ、適切な点検と修繕が行われなければこんなに長持ちしない。マンションは廃墟と化し、資産価値はもちろん大幅下落。居住快適性は失われ「売れない、貸せない」といったお荷物となる。廃墟マンションは所有者の資産性を毀損するだけでなく、周辺の不動産価格にも悪影響を与えよう。

これからマンションを購入する人も、すでに買って住んでいる人も、マンション管理組合の運営には積極的に関与すべきだろう。手始めとしてまず、修繕積立金額は適切か調べるところから始めてはいかがだろうか。大抵のケースで、修繕積立金額が過小に見積もられていることに気づくだろう。なぜなら新築マンション販売のほとんどのケースでは、毎月の支払額を低めに見せるために、積立金額は非常に低く設定されているからだ。

国土交通省によれば修繕積立金の目安は15階・5000平米未満のマンションで専有面積平米あたり218円、5000~1万平米で202円、1万平米以上なら178円程度を平均的な目安としている。機械式駐車場がある場合やタワーマンションなどの場合はさらにコストがかかることもふまえておこう。

連載 : 日本の不動産最前線
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文=長嶋修

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