ただし、興味深いのは、孤独は高齢者だけの問題ではないということだ。米医療保険大手のシグナが先ごろ発表した調査結果によれば、米国で最も孤独を感じているのは、Z世代(18〜22歳)だと見られている。さらに、孤独と社会的孤立は、心身の健康を巡る状況の悪化と死亡率の上昇に直接関連しているとの指摘もある。
アンドリュー・パーカーにある大きなアイデアをもたらしたのは、米国のこうした状況だ。家族が「パパ」と呼ぶパーカーの祖父に手助けが必要だったあるとき、家族の誰も時間の都合をつけることができなかった。そこでパーカーは、その日に祖父のもとへ出向き、手伝いをしてくれる大学生を探し、雇うことにしたのだ。
パーカーは支援を必要とする2つのグループを結び付けることにより、重大な問題の解決を目指すパパ(Papa)の創業者だ。現在はフロリダ州のみでサービスを提供しているが、今後は他州にも事業を拡大する計画だ。高齢者は一緒にいて手伝いをしてくれる誰かを得て、大学生は学内でのアルバイトより高時給の収入を得ることができる。
オンデマンドの「孫」
パパは、高齢者と大学生の世代を越えた交流には、魔法のような魅力があると考えている。自社のサービスを利用する大学生たちをよく、オンデマンドの「孫たち」と呼ぶのはそのためだ。
パパは直接、または医療機関を通じて、顧客にサービスを提供する。ユーザーの高齢者は大半が活動的で、比較的健康だ。だが、学生に求められることが多いのは、病院までの送迎と帰りがけの食料品の買い物の手伝いだ。高齢者を自宅まで送った後に一緒に映画を見たり、食事をしたりする場合もある。
また、これまでには10時間限りのオンデマンドの「孫」として、高齢者が出席する結婚式に同席してほしい、ビーチで一緒にのんびりしてほしい、人生の物語を書き記す手伝いをしてほしい、といったユニークな依頼もあったという。
同社のサービスには、テクノロジーという同様に重要なもう一つの要素が含まれる。パパのデジタルプラットフォームは、高齢者と家族、世話をする人、同社のチームという関わる全ての人たちの経験を管理する包括的なプラットフォームを提供するほか、無料通話の電話番号やモバイルアプリ、オンラインポータルから利用が可能であるなど、誰にとっても、シンプルで簡単なものだ。
パパは家事の手伝いをしたり、スマートフォンやパソコン、ソーシャルネットワークの使い方を教えたり、移動の足を提供したりする楽しく元気な大学生を紹介することで、高齢者の孤独の問題解決を支援している。