ビジネス

2018.05.19

落合陽一らが語る、シンギュラリティ時代の「介護」

木野瀬友人、落合陽一、下河原忠道の3名が「介護・ダイバーシティとテクノロジー融合」について話し合う。

医療・介護人材や財源の不足が騒がれる昨今、高齢者になって身体機能が低下したり、障害を持って生まれたりと、身体のダイバーシティがあっても自分らしくいれる社会はどのようなものか。

「現代の魔法使い」と呼ばれる落合陽一と、「VR認知症」などVRコンテンツの開発や、サービス付き高齢者向け住宅を運営する下河原忠道の対談(モデレーター:デジタルハリウッド大学院 木野瀬友人)を通して、介護・ダイバーシティとテクノロジー融合を模索した。


介護にもビジネスの論理を入れるべき

下河原忠道(以下、下河原):介護そのものに対するイメージが悪いため、働いている人たちのモチベーションは上がらないし、業界も衰退してきています。にもかかわらず、ニーズは右肩上がりに増えている。その悪循環をドラスティックに変革しなければならないタイミングに来ています。

私はその変革を、テクノロジーの力を活用して行なうのが良いのではと考えています。

落合陽一(以下、落合):人口統計を考えると、今後は都市部と地方で全く違う介護が求められるようになります。なぜなら、東京を中心に南関東の人口は増加し続ける一方で、地方はどんどん減っていくから。地方は現在も高齢化・過疎化が進んでいますが、東京には今後ますます人が集まってくる、かつ高齢化していく。これが一番の問題です。

地方は過疎化し、残った人も高齢化していきますが、人数が少ないこともあり、今後はロボティクスや遠隔医療によって問題解決できると思います。

でも、都市部で孤独死する人は今後猛烈に増えるのではと危惧しています。これは多様な問題解決が求められるという、最も良くないパターン。

一概に「介護」といっても、サービス付き高齢者向け住宅(略称:サ高住)と、普通の高齢者施設の問題は全然違うし、問題解決の方法も異なります。僕がサ高住の問題解決をするつもりで、たとえばTwitterに「○○の介護は〜」とつぶやくと、「お前は問題の一端しか見えていない!ぶっ殺すぞ!」というようなクソリプ(笑)が飛んできたりします。これは恐ろしい問題です。民主主義で解決できませんから。


下河原忠道

木野瀬友人(以下、木野瀬):政府の資料を見ると、画一的な見方で作られた資料や政策ばかりのように感じます。おそらく、まだ複雑な現状に対応しきれていないのではと思いますが、いかがですか。

落合:そういう資料には「多様な人生を育むスキームの構築」と書いてあったりしますが、そのスキームが育まれるのはサ高住だけであり、他の高齢者施設には人員・資金面の問題で、当てはまらないのではと思いました。政府資料は、それを「多様な」という表現だけでまとめようとするから、実情も内容もバラバラになっているんです。

だから、他の施設にいる人は「現場を分かっていない!ぶっ殺すぞ!」というクソリプを送ってくるんですね。問題はクソリプを送っている人ではありません。彼らは別に悪意があるわけではなく、実際の現場がそうだから、本気で僕のツイートが間違っていると言っているにすぎません。クソリプという形でしか意見を表明できないこと自体が、そもそも問題なんです。

介護業界もビジネスとして、ICO(Initial Coin Offering=新規仮想通貨公開)などで市場を作ればいいと思うんですよ。

下河原:時間や商品に頼らない仕組みが必要ですよね。サ高住はほとんどが実費で社会保障費の割り当てはありません。それが良いところでもありますが、民間会社としては今まで当たり前にやってきたことだとも言えます。

落合:ビジネスですからね。いいデザインといいサービスを提供して、いいモノを欲しい人が買う。シンプルなロジックだからこそ、やっぱり一番強いですよ。その強いロジックを介護業界にも適用するのが正しいと思います。ポイントは、「当事者を巻き込む」こと。そうしないと社会に浸透しないし、瞬間的に盛り上がって終わってしまいます。
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構成=筒井智子

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