だが、それだけだろうか──?スマートコントラクト関連のビジネスを手掛けるコンステレーション・ラボ(Constellation Labs)の顧問、マサイアス・ゴールドマンはそう考えている。「韓国政府に隠された動機はないだろう」との見方だ。
「詐行為欺が新しい技術に関連していた場合でも、新しいからといって人をだますことが認められるわけではない。適用されるのは同じ司法制度と刑法だ」
ステーブルコインを発行するコワラ(Kowala)の最高経営責任者(CEO)、アイランド・グローバーも同意見だ。大規模で集中化された、そして規制されていない仮想通貨の取引所でボラティリティの高い資産が大量に取引されていれば、詐欺などの被害に遭う危険性は高まり、起こり得る問題のリストは延々と続くものになるという。
そして、そのため政府による規制は、仮想通貨市場にとって悪いことではないと見られている。ゴールドマンは今後の取り締まりについて、「(規制するか否かという)二者択一の状況ではない」と考えている。当局は詐欺を最小限に抑えるために規制を進めているとの見ており、否定的には捉えていない。
価格の下落は「感情的反応」
専門家がこのような見方をしているのであれば、アップビットの家宅捜索を受けて仮想通貨の価格が急落したのは、なぜだろうか?スマートコントラクトのセーフティネットを提供するセージワイズ(Sagewise)のダニエル・ライス最高技術責任者(CTO)は、市場は完全に感情的に反応していると指摘する。
「伝統的な資産の価値を分析するための標準的な方法の中には、ビットコインやその他の仮想通貨の評価には適用されないものもある」
「そのため仮想通貨の価格に関する予測は投機的になり、ボラティリティの大きさによって証明されるとおり、感情に左右されることが多くなる。アップビットの家宅捜索のようなニュースが価格に影響を及ぼすのは、過去にも取引所で起きた問題が、価格の暴落を招いたことがあるからだ」
さらに、捜査に関する報道は、別の理由で価格に変動をもたらす可能性がある。すでに指摘されているとおり、貨幣の発行を独占的に行う政府の立場を脅かし、通貨発行益(シニョレッジ)を得ているという明らかな理由から、政府が仮想通貨取引を中止させるのではないかとの懸念が高まるためだ。