勝利した93歳の誕生日も近いマハティール・モハマドが、再び首相に就任。小国でありながら地理的、そして象徴的な意味でも重要な位置を占めるマレーシアは今後、本当のほほ笑みの国になれるかもしれない。マレーシア航空370便の謎の行方不明事件の後、この国にあまり目を向けてこなかったと言える欧米人たちにとっても、同様に祝福すべき理由がある。
それは、厄介な面もある複数政党と選挙に基づいた体制よりも、国の前進のためには中国共産党のようなトップダウン方式の方が優れているとされることも多いためだ。また、シンガポールでさえ多くの慣行に英国の植民地時代の影響を残し、統治においてはエリート層による支配を当然のこととして許している(マレーシアとは歴史的に複雑な関係を持つシンガポールでも、今回の総選挙には肯定的な見方が目立った)。
マハティール政権の今後
政権交代の実現が多くの人々を鼓舞したのは、「経験」に対する「希望」の勝利だろうか。それとも、政権政党の交代によって起こり得る「修正」とそれによる政府内の「換気」だろうか。
長期政権を担った与党連合・国民戦線(BN)に再び大規模な汚職疑惑が浮上していたマレーシアでは、政権交代の機は確実に熟していた。だが、9年間に及んだ首相の在任期間中に十分な結果を出すことができなかったナジブ・ラザクとその取り巻きが依然として主導権を握っていたことから(与党は2008年以降の選挙で、毎回敗北していた)、その実現を見込んでいた人はほとんどいなかった。
マハティールは同国の独立以来、最も傑出した首相だった。だが、今それを気にする必要はない。現在は主に民族的少数派で構成され、長く苦境に置かれてきた党の名目上のリーダーだ。
マハティールの経済政策は、税の一部廃止や補助金制度の改革など含め、ポピュリスト的だとされている。組閣にあたっては、多元的な同国社会の結束と成長エンジンの強化を目指し、能力主義に基づく人選を行うと見られる。なお、同国では前政権の下でも、起業の自由が問題視されることはなかった(企業にとって重荷となっていたのは、政権の偏った優遇措置が投資に影響を及ぼすことだった)。
新首相にとってより切迫した課題は、通貨リンギの安定だ。そして、公約に掲げた(同性愛行為の罪で)服役中の旧敵、アントワル・イブラヒム元副首相の釈放の実現だ。アンワルは今後、マハティールの後継者となる可能性がある。
自由民主主義の置かれた状況に関する不満の声が高まる現在、マレーシアの今回の選挙結果とそれに伴う出来事は、注目すべきものだ。これらが無駄にされないこと、そして同国にとどまることなく、何百万もの人々のための新たな道が示されていくことを願いたい。