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2018.05.17

日本人が知らない中国「ZTE」の覇権、米国ではスマホ市場4位

testing / Shutterstock.com


クアルコムにも大きな打撃

ZTEへの制裁は、これまで同社に部品を供給してきた米国メーカーにとっても大きな痛手だ。例えば、クアルコム製チップはZTEが昨年出荷した4020万台のスマートフォンのうち65%に搭載されている。チップの単価は15〜20ドルで、クアルコムは年間売上高が5億ドル減少することになる。

また、マサチューセッツ州に本拠を置く光ファイバー部品のメーカーである「Acacia Communications」は、昨年の売上高の30%がZTE向けだったが、制裁を遵守するために今後3カ月間はZTEとの取引きを停止するという。ZTEにメールでコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。

アフリカの通信インフラにも影響

ZTEの通信機器事業も影響を受けている。同社製品はシスコやエリクソンなどの競合製品よりも安く、特にアフリカで広く普及している。上海に本拠を置くコンサルタント会社「ICwise」のチーフ・アナリストであるGu Wenjunによると、ZTEの製品は性能も優れており、2014年に西アフリカでエボラ出血熱が流行した際にも通信サービスは円滑だったいう。

GuによるとZTE製品を多く使用している南アフリカ本拠の大手通信キャリア「MTN」は今回の制裁を受けて対応策を検討しており、競合企業はこの機に乗じて売り込みをかけてZTEからシェアを奪おうとしているという。

「ZTEの製品が手に入らなくなれば、キャリアはシスコやエリクソンに切り替えるだろう」とGuは話す。この状況が長引けば、キャリア各社は長期的な仕入計画も見直さざるを得なくなるだろう。

中国はコア技術の内製化を推進

ZTEの命運は、今後の米中間の協議に掛かっている。中国副首相の劉鶴は、今月初めに北京で行われたムニューシン米財務長官との会合に続き、近く訪米する予定だ。中国政府は、ZTEへの制裁によって海外技術に依存することのリスクを再認識しており、中国製スマートフォンには中国製チップを搭載できるよう、国内ハイテク産業への支援策を立て続けに発表している。

「コアテクノロジーに対する海外依存度の高さは大きな課題だ。重要なインターネット技術を自国で保有することが今後の我々のミッションだ。コアテクノロジーの多くを輸入に頼ることは、他人の壁の上に家を建てるようなものだ。外見がどれだけ大きく美しくても、嵐が来ればひとたまりもない」と習近平主席は先月述べていた。

編集=上田裕資

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