元米軍司令官が語る 機能不全を打破するリーダーシップとは

元米国陸軍大将、統合特殊作戦コマンド司令官 スタンリー・マクリスタル(Photo by Peter Kramer/NBC/NBC NewsWire via Getty Images)


──組織内での権限委譲はどのように促進しているか? 誰ひとり望まないことのようにも思われるが

権力にしがみつきたいのが人間の性だ。そこで鍵となるのは、組織内のさまざまな立場の人々に、それがいちばん皆のためになることなのだと納得してもらうことだ。より大きな目標を視野につながり合うことにこそ利があるのだという認識へと皆を誘導するべきなのだ。

──共通の目標を持った企業文化をどのようにして作るのか

考え方を伝え、より広範なミッションを伝えることだ。アフガニスタンでよく言っていたことがある。「もし君が地面に伏しているなら、我々が君に与えていた命令は誤っていたことになる。我々が君に与えるべきであった命令を実行しろ」。部下に指示を出すときに、部下に与えた責任について考えてみてほしい。部下には、ベストな判断をして欲しいはずだ。

──しかし、従業員に「ベストな判断をしろ」と言った時、彼らはルールを無視することにならないか。組織における正しいレベルの「異議」や「反対意見」とはどのようなものか。クリエイティブな考え方を必要としているソフトウェア企業ならば異議や議論に適しているかもしれない。しかし、軍隊や工場といった組織は「異議」や「反対意見」に耐えられないのではないか

軍隊にも膨大な異論が存在するよ! ただ議論のあり方が異なるというだけのことだ。すべての健全な組織では、異論は対面で行われる。「OK、君の意見には反対だ」と人から面と向かって言われる。不健全な組織では、異論は受動的または攻撃的な抵抗運動になる。

──それは組織文化を毒することになる

その通りだ。異論は重要だ。しかし問題は、時と場所を選ぶものであるということだ。揚陸艇が浜に乗り上げ、船首の踏み板が降ろされたなら、もはや計画についてあれこれ議論をするべき時ではない。あなたがチームのメンバーに尊敬を払い、プロセスに従事させ、情報を与えれば、不健全な反対意見はなくなる。可能な限り、意思決定に透明性を与えることだ。

──あなたはチーム内の多様性や統一性を追求するか

多様性は望ましいものだ。困難なのは、多様性に満ちていながらコミュニケーションが活発に行われる環境をつくることだ。SEALやレンジャー部隊を引き合いに出すなら、それらは均質な組織であるように思える。だが、彼らの思考スタイルには幅広いものがある。よき指揮官は多様な考え方をうながし、彼らの思考を様々な方向にふり向けるためにその多様性を活用するものだ。

──ところで話は変わるが、あなたはどうしてそれほど均整の取れた体つきをしているのか

1日おきにランニングとジム通いをしている。朝起きると1時間以上ランニングをして、それからストレッチをする。次の日には起きると自宅で腹筋と体幹のトレーニングを1時間ほどやり、それからジムに行くことにしている。

──ジムにまで

ジムでまた1時間か40分ほどウェイトリフティングや懸垂をする。トレーニングを休む日はほとんどない。

──ちなみに、あなたは1日に1食しか食べないそうだが

もう40年ほども続けている。太りはじめたと思ったのがきっかけでね。バカなことはやめろとか身体に悪いとかまわりからよく言われたが、今では賛成してくれるどころか、すばらしいと言ってくれる人も増えた。また何年かしたら、まわりの皆が身体に悪いとまた言いはじめるのかもしれないけれど。私は63歳だ。すぐに習慣を変えたらそのせいで死ぬことにもなりかねない。

翻訳=待兼音二郎

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