アナスタシアビバリーヒルズの人気ぶりには、大手化粧品メーカーや投資企業も目をつけている。5月8日、経済メディア「CNBC」は投資ファンド「TPGキャピタル」が、同社の発行株式の一部の取得に向けた合意に近づいたと報道した。TPGはアナスタシアビバリーヒルズの企業価値を、約30億ドルと評価したと伝えられた。
これは小規模なコスメブランドに与えられる評価としては異例のものだ。2016年にロレアルはIT Cosmetics(イット・コスメティックス)を現金12億ドル(約1300億円)で買収していた。IT創業者のJamie Kern Limaはその後もCEO職に留まり、現在の資産額は4億1000万ドルと推定されている。
同じ年にエスティーローダーはメイクブランドの「Too Faced」を14億5000万ドル(約1590億円)で買収していた。
「既存の大手化粧品ブランドが成長を目指す上で、買収は避けては通れない道になっている。美容業界のコングロマリットが、これまでの手法で業績を伸ばすのは難しい」と、コンサルタント企業「A.T. Kearney」のHana Ben-Shabatはフォーブスの取材に述べた。
アナスタシアビバリーヒルズを運営する女性起業家、アナスタシア・ソアレは同社株の100%を保有していると以前のカンファレンスで述べていた。ルーマニア生まれのソアレは1989年に移民としてロサンゼルスに移住した。
シングルマザーだった彼女は、苦労して英語を学びエステティシャンとしてのキャリアを始動させた。その後、米国の女性たちがあまり眉毛に関心を払っていないことに気がついたという。
ソアレは自身で生み出した美しい眉毛の法則を「パーフェクトアーチ」として美容サロンの顧客に売り込みはじめ、その後の数年でスーパーモデルのシンディ・クロフォードやナオミ・キャンベルらの支持を得ることになった。
1992年に自身の眉毛サロンをビバリーヒルズに開設したソアレは、その5年後に旗艦店をオープンさせた。そして、2000年に眉毛に特化したディップブロウポマードなどのアイテムの販売を開始。百貨店の「ノードストローム」などを足がかりに販路を広げていった。
アナスタシアビバリーヒルズの急拡大を牽引したのは、インスタグラムだった。2013年にインスタグラムの投稿を開始すると、キム・カーダシアンなどの有名セレブもソアレのアイテムを取り上げるようになった。現在ではインスタグラムのフォロワー数は1600万人に達している。
アナスタシアビバリーヒルズは現在、約485のアイテムを世界2000店舗以上で販売している。また、米国や欧州、アジアや日本では「アナスタシアサロン」を展開中だ。