少子高齢化社会でこそ「食卓を囲む」べき理由

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噛むというのは人生の努力なようなものです。それは自らの進化と退化に非常に深く関係しています。噛まずなくてもいいことが増えたいま、本当に人類は進化しているのか? それとも退化しているのか?

食事に限らず、情報についても同じです。インターネットやSNSの普及で情報が溢れる社会において、流れてくるものを咀嚼せず鵜呑みにしていては、自分の栄養として府落ちさせることができません。

どれだけ噛む時間をとったか、というのは、どれだけ生きる努力をしたかということ。そう考えると、食卓を囲み食事を共にすることは、共に努力し、切磋琢磨をするということで、「共創」の一番小さな形なのではないかと思います。すると、世代を超えた食事、国境を越えた食事が、これからの時代にいかに重要か見えてくる気がします。


フランスの味覚教育の第一人者、ジャック・ピュイゼ氏。今年も3月に訪問し、噛む教育について話を聞いてきました。

地域に伝わる伝統のレシピが、生き残っていくための先人たちの知恵であるように、食事は愛や寛容の象徴です。人類にとって食事が持つ意味はとても大きく、進化の鍵です。

例えば、この記事で取り上げた「子供の教育」「親の介護」「自分のストレス発散」という現代人の3つの課題も、別々のテーマとして捉えがちですが、食卓を囲むという一つのことに解決のヒントが隠れているのです。

テクノロジーの発展で長生きすることができるようになり、「人生100年時代」なんて言われるようになりましたが、生きられる時間が増えた割には日々の生活を忙しく過ごし、心が貧しくなっているのではないかと思います。

このゴールデンウィーク、故郷へ帰省した人も、国内外に旅行した人も、そこでどのような食事をしたでしょうか。さ、今日からでも遅くはないです。喰い改め、食卓を囲みましょう。

文=松嶋啓介

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