このように、「インクルージョン」は、多様性という言葉ともに使われることが多い。2015年に渋谷区で日本初の同性間のパートナーシップを認める「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」が施行された。
その推進役であった長谷部健区長は、菊池桃子さんに遅れること1年、「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」のテーマを掲げ、20年後の渋谷区の未来像をまとめた。いま渋谷区は、「ちがいを ちからに 変える街」として、多様性をまちづくりの原動力にし、成熟した国際都市への進化を目指している。
2020年は、東京オリンピック・パラリンピック(TOKYO2020)の開催で、日本ではインクルージョンの動きが加速するはずだ。世界各国から集まるオリンピアン、パラリンピアンを受け入れるホスト国としての力量も試されるからだ。
この3月に、わたくしも大会組織委員会の持続可能性ディスカッショングループの委員から、「D&I施策についてアイデアが欲しい」と依頼を受けた。もはや「ダイバーシティ&インクルージョン」は、サードウェーブコーヒーの店名かとも誤解しかない略称で流通しはじめている。
わたくしが出した「TOKYO2020」のD&Iプランは、史上初のオリパラ混合リレーのエキシビジョンゲームを行うというものだ。
男女ミックスダブルスの競技があるのだから、せっかくのオリンピックとパラリンピックの端境期を利用して、国別に多様性に溢れた選手が混ざり合い、国立競技場のトラックで陸上のリレーに挑む“Mix race”を団体戦で競い合うというゲームがあってもいいだろうと考えた。
男女はもちろん、シニアやジュニアのオリンピアン、LGBT、車椅子や視覚聴覚の障害者、各国の少数民族、少数宗派などの混成チームによる団体競技である。例えば、10人が1チームとなり、男女比は半々、多様性に条件をつけた選手で構成し、トラック1週400mずつを、日本ならではの襷をつなぐスタイルで「ダイバーシティ・ミックス・エキデン」を行う。
セクト化されがちなタイバーシティの団体も、「和を以て貴しとなす」日本の大会だからこそ初めて実現できるイノベーティブな試みになるのではないだろうか。
TOKYO2020が「多様性の祭典」として、新たなオリンピック・パラリンピック・レガシーをつくることができたら、国連のSDGs(持続可能な開発目標)達成を目指す世界的ムーブメントにもなるはずだ。2020年に向けたインクルージョンなイリュージョンが実現しますように。