こういう態度は友人や同僚の間柄に限ったことではない。会社や上司との関係の中でもよく見られる。最近私は、2万7048人の役員・管理職・従業員を対象に「部下のフィードバックを無視することのリスク」という調査を行った。
分かったことのひとつは、部下が抱える問題について相談しても、建設的に対応しているリーダーはあまり多くないということだ。そして、部下の悩みが何であれ、それを「ありがたいと思え」と一蹴してしまうことは、決して建設的な対応とは言えない。
調査では、仕事上の問題について上司に相談する際、いつも建設的に対応してくれる、と答えたのはたったの23%だった。対して、17%が上司は決して建設的な対応をしてくれないと答えた。
いつも建設的に対応してくれる(23%)と、かなりの確率で建設的に対応してくれる(22%)と答えた人を合わせても、なお従業員の半数以上が仕事上の問題について上司に相談しても建設的に対応してくれないと感じていた。
仕事上の問題を相談しても、上司は建設的に対応しない、もしくはできないと感じれば、大きな影響が生じる。今回の調査で、自分の職場を素晴らしい勤務先として人に薦めたいか、という問いに対する回答者の反応はこうだった。
「上司はいつも建設的に対応してくれる」と答えた部下のうち、職場を素晴らしい勤務先として推薦する人の割合は60%。対して、「上司は決して建設的に対応してくれない」と答えた部下が、職場を素晴らしい勤務先として推薦する割合は、たった5%だった。
つまり、上司がいつも建設的に対応してくれると感じている場合、会社を優れた勤務先として推薦してもらえる確率は12倍になる。
もちろん、友人が、実際に問題解決にあたらなければならなくなる時期はいずれ必ず来る。その際は、ネガティブな状況をポジティブにとらえる必要もあるだろう。
ただ難しいのは、「ネガティブ思考はやめて、もっとポジティブにとらえたら?」と言ったところで、友人や部下がつらい状況を見直すための助けには恐らくならないことだ。大半の人は、「もっとポジティブになれ」と言われても、快く受け止められないだろう。
誰かが直面しているつらい状況が、実際には良い状況なのだと言うのではなく、その困難な状況の中からどうにかして良いことを見出せそうか聞いてみてほしい。そうすれば、単なる一方通行の説教ではない真の対話を交わせると同時に、共感性を保つこともできる。
なぜなら、こうした言葉をかけることによって、相手の状況はつらいものではないなどと説得するのではなく、「大変だよね。分かるよ。一緒にこれを乗り切ろう」という気持ちを伝えることができるからだ。