職場でのドレスコード
21世紀になってしばらくたつ今でも、新入社員が真っ先に指導されることの一つは服装だ。女性は短すぎる丈や露出が多い服を着てはだめ、男性は若者じみた服を着てはだめ、などの規則がある。仕事よりも服装に注目を集めることを避けるのが理由なのは分かる。だが、型にはまったスタイルを喜んで受け入れる人などいないはずだ。
ファッションセンスは個性の現れだ。フェイスブックのシェリル・サンドバーグ最高執行責任者(COO)は、人は職場に自分をそのまま持ち込まなければならない、と述べている。私はこの意見に賛成だ。従業員が個性を隠すことによる長期的なダメージは、会社にとっては服装よりもずっと大きい。
私個人の経験では、自分らしく振舞うことを犠牲にし、会社に溶け込もうと努力していたときは、非常に惨めな気分になり、成功を収めることもできなかった。自分が適切だと思う服や行動を許されたときの方が、はるかに大きな成功を収めていた。
個性を優先
なぜ私たちは個性を見せることを避けるのだろう? 良い仕事をすることと、自分らしくあることは、両立不可能なのか? ビジネス界はそう思っているようだ。しかし、私は今まで、均一性が高い会社がうまく行く確たる証拠を見たことがない。むしろその逆の証拠なら目にしたことがある。
マスクは工学からデザインまで、広い分野に関心があることを見せるのをためらわない。恋人のグライムスがメットガラで着た衣装は、彼がデザインを手伝ったとも報じられている。私は彼の個性に引かれ、テスラやそのビジネスにより強い関心を持つようになった。究極的には、マスク自身が自社商品の最高の宣伝になっているのだ。
ビジネス界の人の大半は、眠気を誘うほど退屈だ。業界を退屈さのレベルで格付けするとすれば、ビジネスは学術と並び上位に入るだろう。この点が明確に現れている場がツイッターだ。良い企業アカウントとは、ユーモアとインサイト(見識)を融合したものだが、こうしたアカウントはなかなかない。
大半のCEOと違い、マスクは一般大衆との対話や、現状に疑問を投げ掛けること、自分のしたいことをするのをためらわない。彼の「パーソナルブランド」には、こうした動きがプラスになっている。
マスクが予言するように人工知能(AI)が今後世界を乗っ取るとすれば、ロボット社会が現実になる前に多様な個性を楽しんでおくべきだろう。