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2018.05.13

貧困者をプログラマーに ザッカーバーグの同級生が広める支援の輪

Coalition for Queensの徐諸凱(Photo by Andrew Toth/Getty Images)


C4Qは2013年に設立以降、グーグルの起業家ベンチャー支援部門グーグル・フォー・アントレプレナーズ(Google for Entrepreneurs)やセールスフォースの慈善活動組織セールスフォース・ドット・オーグ(Salesforce.org)、ニューヨーク市の貧困撲滅組織であるロビンフッド財団などから寄付を集めてきた。今年のC4Qの予算は550万ドル(約6億円)で、10カ月の講座に144人が参加予定。うち半分は女性で、60%はアフリカ系・中南米系だ。

徐は昨年、寄付増額とプログラム拡大の試みとして、授業料無料制度から「18─85の就職債権制度」へと切り替えた。徐によると、プログラム受講生の入学前の平均年収は1万8000ドル(約200万円)だが、プログラム終了後の平均年収は8万5000ドル(約930万円)になる。

彼は2017年、社会活動投資会社のインヒアレント・グループ(Inherent Group)やリリー・オーチンクロス財団(Lily Auchincloss Foundation)から、C4Q受講生の授業料に充てられる75万ドル(約8200万円)の資金を就職債権への投資の形で集めた。受講生は年収6万ドル(約654万円)以上の仕事を見つけた場合のみ、債権所有者に給与の12%を3年間払う。徐によると、債権所有者は6.6%の年間利回りを見込める。

同制度は、ゼネラル・アセンブリのようなプログラミング学校が提供する「収入共有契約(ISA)」と似ているが、その目的は利益を得ることではなく、受講者数を増やし、クイーンズ地区以外にもプログラムを拡大することだ。

C4Qは今年、新たな授業料モデルも実験中だ。食材配送サービスを提供するブルー・エプロンと、オフィスサービスを提供するスタートアップのマネジド・バイ・キュー(Managed by Q)の2社は、C4Qに料金を支払い、テック職向け候補者の特定と訓練を委託している。選ばれた2人にはC4Qを卒業後、年収8万5000ドル以上の仕事が与えられることが約束されている。

そのうちの一人は、4歳の息子を持つ29歳のシングルマザーだ。ニュージャージー州にあるブルー・エプロンのキッチンで、食材準備担当者として時給13.25ドル(約1450円)で働いている。彼女は高校卒業後、同州キーン大学エリザベス校で3年半の間、映画と英文学を専攻したが、金銭的な理由で卒業できなかった。

彼女は現在、週30時間ブルー・エプロンで働き、月~水曜日の午後7~10時、土日の午前10時~午後6時に息子の世話を妹に任せ、C4Qの授業に出席してフロントエンドやバックエンドのウェブアプリ構築法を学んでいる。ブルー・エプロンはプログラム終了後、彼女にマンハッタン本社で年収8万5000ドルの開発者の職を保証している。

「全てが信じられないような感じ」と彼女は語る。「大変なのは確かだけど、とても楽しい。新たなことを学んでいるし、これで自分の人生が変わり、息子のためにずっと夢見ていた道が開ける」

編集=遠藤宗生

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