テクノロジー

2018.05.14 11:00

BASEが「誰もが資金調達できるサービス」を始めた理由

(左)BASE BANK 矢部寿明 (中央)BASE 鶴岡裕太 (右)BASE 柳川慶太


──サービスのアイデアを着想したきっかけは何だったのでしょうか?
advertisement

個人的な経験が強いです。オープン時からショップのことを知っている自分と、最近そのショップを知った人が同じ値段で買い物をすることに昔から違和感があって。立ち上げ期から定期的に商品を購入しているお客さんと、大手百貨店に実店舗を出店してからお店の存在を知ったお客さんが商品に対して等しく1000円を払ったり、抽選に外れて購入できなかったりというのは、何か不公平な気がしませんか?



お店からすれば、立ち上げ期から商品を購入してくれているお客さんの方が価値が高いわけです。
advertisement

──昔から応援していたアイドルがメジャーデビューしてしまって、チケットを買えなくなったような感覚ですか?

そうです。要はタイミングや思い入れによって、お金の価値も変化するのではないでしょうか。名前が売れていない頃にもらった1000円と、有名になってからもらう1000円では重みが違いますし、やはり1号ファンが払ってくれる1000円は特別ですよね。この違いをなんとか表現したくて。

例えば、商品販売3ヶ月前にコインを安く提供すれば事前予約割引になるし、昔からのファン限定でサービス付きのコインを発行することで恩返しもできます。ファンからすれば、まだ商品が揃っていない頃からショップを応援する手段になるはずです。

BASEのショップの良さは、もともと作り手と購入者の距離感が近いこと。売り上げ上位店も含めて自作グッズを扱うコミュニティのようなショップが多いから、ショップとファンが様々な形でつながる手段があればいいと思っています。

また、自作グッズはそもそも一律に価値を決めることが難しい。Amazonで売られている商品のように原材料や作るのにかかった時間ではなく、言ってしまえば作り手の想いで値段が決まります。こうした世界をもっと正確に表現させてあげるためにも、法定通貨以外の仕組みが必要だったのです。

潜在的な「信頼」を炙り出したい

──2018年1月にはBASE BANKを設立。金融分野への注力が目立ちます。

BASEの「価値の交換を最適化する」というミッションを実現するためには、金融サービスの充実は不可欠ですから。100%子会社であるBASE BANKに対して今回のショップコインはBASE内のサービスですが、単に後者の方が早くからサービス構想を練っていただけで大きな区分けはありません。将来的には両者がコラボする可能性も十分にあります。

──まだ具体的なサービス内容は発表されていませんが、BASE BANKはどのようなサービスを提供することになりそうですか?

BASE BANKのミッションは「銀行を簡単にする」こと。詳細はまだお話しできませんが、もちろん融資手段もその一つとしてもっと充実させたいなとは思っています。

これまでになかった新たな銀行をつくりたいのではなく、既存の銀行サービスを受けることができなかった人に窓口を用意してあげたい。そういう意味では、今回のショップコインも同じ思想ですね。

──今回のショップコインとBASE BANKはどのような関係なのでしょうか。

僕らは「信用」を大きく3つの段階に分けています。まず、世間一般でも知名度があるくらいに強い信頼をもつ人。例えば芸能人である田村淳さんはBASEで開店前からファンがいて、ショップを開けばほぼ確実にヒットしますよね。こうした世の中一般的に「信頼・与信」が高い人を支援するのがBASE Creators Investmentです。

次に、BASEで店舗を開くなどして、世の中的にはまだ分からなくてもBASE社であれば信頼や与信をはじき出せる人。こういう人たちにはまた新たな金融サービスをBASE BANKで提供してもいいなとも思っています。

最後に、まだBASE社でも信頼をはかりかねる人がいます。まだ店舗を開いて間もない、あるいはあまり売り上げが立っていない人たちには、ショップコインの発行で施策の幅を広めてもらいたい。

──信頼をもっている人にも、そうでない人にも商品を売る以前からお金を得る手段を提供したい、と。

はい。今後は、BASE加盟店以外にも融資サービスを提供することも視野に入れて、加盟店の蓄積データを生かしてより正確な与信を図る仕組みをつくるつもりです。

そもそも信頼は後からつくるものではなく、初めから存在するものだと思っています。何かをすることによって突然信頼されるようになるのではなく、潜在的な信頼が行動によって顕在化していく。

本来はショップを開設した瞬間にその人の信頼がどれくらいかわかってもいいと思っています。そういう意味では僕らが段階別に融資サービスを提供しようとしているのは、与信に応じてお金を貸すのではなく、その人が本来もっている信頼を炙り出そうとしているのだといえますね。

文=野口直希 写真=若原瑞晶

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事